ぽろぽろと、零れる涙を どうしたらいいのだろう。
止まらなくて、止められなくて、困らせてしまう。
「泣くなよ 」
頼むから、と 弱ったような顔をして、景吾が俺の頭をぽすぽすと軽く叩いた。
「仕方ないだろっ!…止まらないんだから…っっ」
まさか 自分が人前で泣くなんて、思ってもみなかった俺だ。
言い返す声が震えるのも 恥ずかしい。
「ったく…普段 取り澄ましてるくせに…」
こんなギリギリになって泣くんじゃねぇよ と
呆れたように言いながら 俺を抱き締めてくる。
高校2年の この夏、景吾は 海外への留学を決めた。
今日は その出発の日で、昨日 俺のアパートに泊まりに来た景吾は
ここから直接行くから、と 朝まで俺を抱いたまま離さなかった。
コトの最中も、終わって まどろんでいる時も、
笑って冗談のように 精々頑張ってこいと言えていたのに。
いざ景吾が出発するという段になって、俺の涙腺が ぶっ壊れた。
「毎日メールする、週末には電話する、長期休暇には帰って来る。」
俺の背中を、あやすように叩いて、諭す声は苦さを滲ませる。
「だから、泣き止め。行きたくなくなっちまうだろ?」
「悪ぃ…。でも、ダメ。止まんね…」
「っとに…」
急に可愛くなりやがって、と 涙を止められない俺の顔を上げさせ
景吾は 思い切りよく口付けてきた。
窒息しそうなほどに深められたそれに、必死で応える。
「ん…」
唇を離された時には、涙は 眦に溜まった雫だけになっていた。
「浮気すんじゃねぇぞ、。」
「景吾こそ。」
「ふん。俺には お前しか 見えてねぇよ。」
じゃあ、行って来る と景吾は ドアを開け、出て行った。
額にキスと、ほのかな温もりを残して。
☆Thank you...☆