19.わがまま王子




「はーなーれーろーっっ」

「いやだっ」

「いやじゃねんだよ、離しやがれジロー!」

「いーやーっ!が頷くまで 離さない!」

「いやなのは俺だっつーの!誰が頷くか!! 」


昼休みの教室。ジローが俺に 引っ付いて10分。

延々繰り返される言い合いに、ピリオドを打とうとしたのは忍足。


「ええかげんに せぇへん?仲良いんは分かるけど…」

「じゃあ、ジローを俺から引っ剥がしてくれ。」

「いやいや、そこはが 折れてくれんと無理やわ。」

「あのなあ…」


どこの世界に、昼休みはテニスとエッチどっちがいい?とか訊かれて

平然としている奴がいるんだ?!

自慢じゃないが、俺はテニスは そこそこ上手い。でも好きじゃない。

だからって、学校でヤるなんて俺的には以ての外だ。

なんてことを 周囲には聞こえないように潜めた声にドスを利かせて

その耳に吹き込んでやれば、忍足は もうええ、と言って逃げた。


!はやく どっちか!! てゆーかエッチしよう!」

「ふざけんな!俺は これから昼寝するんだ!! 」


苦し紛れに言ってしまったことは 本心ではなかった。

俺に 昼寝なんてする気は さらさら無かった。が。


「じゃあ それでいいよ。」


ぱっと明るい顔になったジローは、俺を引きずるようにして教室を出た。


「は?何?どこ行くんだよ?」

「屋上!」


昼寝するんでしょ?と嬉しそうに言うジローに、

俺は間違った提案をしてしまったんだろうか と思って、だけどもう 諦めることにした。


寝たら ちょっとじゃ起きねぇ王子様だ、

下手したら 5時間目には間に合わないだろうな、と どこか呑気に考えながら。












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