「触んなよジロー、ヤケドすっから」
「わかってるよ!宍戸 いちいち うるさい」
部室棟裏。排水溝を塞いだ水飲み場。
もくもく ふわふわと漂う白い冷気。
正レギュメンバー+アルファによって遊ばれているのは
ドライアイスという名の冷却剤。
「この周りだけ他より少し涼しいよね」
手で白い冷気を自分の方に招きながら、
アイスキャンディを咥えたが息をつく。
「…部室に行けばクーラーっちゅーもんが…」
「侑士…俺が庶民だって、知ってるよね?」
にーっこりと笑うの笑顔はちょっと恐い。
「いや、今どきクーラーくらい普通…」
「つうか、16本で200円代のアイスなんて買ってくんな」
細いアイスキャンディを嫌そうに持ちながら文句を言う跡部を
「うるさい跡部。黙れ。庶民の敵」
ずびしっ、と 指差してが吠える。
「庶民の敵って…おま…このっ…ガキかっ」
「文句あるなら食べなきゃいいでしょ」
「誰も食わねぇとは言ってねぇよ」
ぶちぶち言いながら跡部は、食わねぇならちょうだい!と
飛びつく岳人からアイスを遠ざけ、これは俺のだ と怒っている。
「なぁ、もう1本食っていい?」
確か余ってたよな、と に声をかけたのは宍戸。
「うんいいよ。はい、好きなのどーぞ」
「あ、グレープ もうねぇんだ?」
箱の中を覗いて、紫色のそれがないのを確認し、
宍戸が少し残念そうに顔を上げた。
「あー、グレープはこれで最後だった。ごめん」
自分の食べかけを指してが言う。
「んじゃ、これでいーや」
と、宍戸は ぱくりとのアイスに口をつけた。
「ちょっと亮!もー、子どもみたいなことしないでよ」
「いーだろ、代わりに こっちのオレンジ半分しよ?」
「…うん」
頷きながらは その頬を赤く染めてしまう。
夏のあついバカップルに、その場にいた面々は
僅かの涼しさを求めドライアイスの冷気の周りに撃沈した。
「ドライアイス触るより、ヤケドしそうやんなぁ」
忍足の言葉に返すものはなく。
青い春のヒトコマは、ヒトカケの冷却剤では
冷ましきれないほど、あっちぃものなのであった。
☆Thank you...☆