冬の休日




「パパーっ!はやくーっ!」


偶然オフが重なって。

偶然 彼に それがバレて。


引きずられるようにして連れてこられた、東方の外れの小さな村の近く。

大きな湖の ほとりで はしゃぐ彼女は エリシア嬢。

俺の尊敬する ヒューズ中佐の娘さん。


「はいはーい。ちょーっと待ってね!!そっからカメラ取ってくれ!」

「え!?あ、は、はいっ」

「ヒューズ!を使うな。自分で取りに来い」


地面にシートを広げ、荷物を置きながら怒鳴るのはロイ。俺の、恋人。


「まあまあ」


苦笑してロイを宥めながら、ヒューズさんにカメラを持っていく。


「おう、サンキュ」

「エリシアちゃんと一緒になって はしゃぐのはいいですけど…」

「ん?」

「氷ぶち割って落ちないで下さいね」


湖には、分厚い氷が張っていて、エリシアちゃんや、他の家族連れ、

カップルなんかが楽しそうに その上を走ったりしている。


エリシアちゃんを追って凍った水の上に出て行くヒューズさんを

見送って、俺は ロイの元へ戻った。

シートに座り、持ってきた魔法瓶からコーヒーを注いで飲んでいた

ロイは、俺の分も入れてくれ、座るように促してきた。


「ありがと」

「どういたしまして」


すとん、と腰を下ろして、熱いコーヒーを啜りながら、

はしゃぐヒューズさんとエリシアちゃんを眺める。


「可愛いね」

「ん?」

「子どもってさ、いいね」


ヒューズさんが羨ましいと思う。あんなに可愛い子どもがいて。


「欲しいかい?」


子どもが、と問われ、


「ん?いや、いらないよ」


首を横に振る。


「ロイだけで、手いっぱい」


子どもは好きだけれど、ロイ以上に愛しい人はいないから。

彼だけがいれば それでいい。


エリシアちゃんを追いかけて、滑って転んでいるヒューズさんに

苦笑を零しながら、俺は そっとロイの手を握った。












☆Thank you...☆