「ああぁぁぁっ!」
「あ?」
叫んだのは。
応えたのは宍戸。
「食べた……」
「はあ?」
「そ、それ……」
部室の机に、ぽつねんと置いてあったのだ。
粒チョコレートが1つ。
夏の空気にゆるく溶けかけたそれを。
宍戸が。
「食べたね!」
「ああ、食ったけど……」
その手には、キラキラと光を反す包装紙。
「お前んだったか?」
「お、れがっ! 侑士からもらって! 楽しみにしてたの!!」
「ああ、ワリ」
「悪いで済むかあぁぁっ」
半泣きになって、ぽすぽすと身体を叩いてくるは可愛い。
「ごめんって、返すよ、返す!」
「だから、ごめんじゃ……は?……んぐっ」
返すと言いつつ宍戸は、ぽかんとあいたのくちに、
さっさと自らの舌を押し込んだ。
「ふぐぅうーっ」
ほのかに甘さを残すそれで、の口腔を掻き回し、甘さを移す。
「は、ふ……っ、こんなの、返したって言わな……っっ」
「あとで買ってやるって」
ぺろりとの唇を舐め、宍戸が宥めるように言う。
「あれ1粒で200円するんだけど」
「……板チョコとかで手ぇ打たね?」
「だめ」
1粒200円するチョコを、一枚100円では誤魔化されないよと、
はキロリと宍戸を睨み上げた。
「すんませんでした」
結局、中学生の財布には痛い、ブランドチョコレートを、
宍戸は泣く泣く買いに行かされたのであった。
Thank you...☆