「!」
教団本部の食堂で、神田と一緒にメシを食っていたら、
入り口から大声で名前を呼ばれた。
「……ラビ、また来たのか」
「ーっ!久しぶりさぁっ!! 」
ぶわっと背景に花でも咲いたんじゃないかというような顔をして、
両腕をいっぱいに広げて駆けてきた、否、もう すでに、ほぼ飛んでいる
状態で俺の元へとたどりついたラビは、メシを食う俺の動作を まったく
妨げることなく俺へと抱きついてきた。
「前に会ったの1週間前だけど」
久しぶりというほど久しくはない。
「つか、お前そんなに暇な……わけないよな」
エクソシストって言ったら、そこで我関せずといった顔で黙々と
ソバをすすっている神田のように、週に2、3度は外での仕事が入り、
ともすれば 1つの仕事だけで半月は帰ってこられないものだと思うのに。
このラビときたら、少なくとも半月に1度は本部へ遊びに来る。
しかも、ほぼ無傷で。
「こんなに頻繁に遊んでて、ブックマン、怒ってないのか?」
「んー、久しぶりのの匂い……」
「話を聞け コラ」
って、それすらも聞いちゃいないラビは、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。
取り敢えず、メシを食うのに支障はないので放っておくことにしよう。
今、俺がすべきは……
「で、神田、どうなんだ?」
「……しつこい」
「ああ、しつこいよ、俺は」
だから さっさと話せと促せば、神田は ぶすりとしたまま箸を置いた。
「!なんでユウばっかり構うんさ!」
「下の名前で呼ぶな!」
「ばっかりって お前ね……」
お前 人の話聞かないじゃないのよ。
ったくエクソシストってのは、どうしてこう我の強いっつーか、変わってる
奴が多いんだろうな。ラビといい、神田といい、コムイといい……
って、コムイはエクソシストじゃないか。
一番変な……いや、変わってる人だけど。
「俺は今、神田の健康診断中」
「だから、いらんと言っている」
ラビに説明しかけたところを神田が遮った。
「いらなくないだろ、大体お前……」
「なんでが してるんだよ」
神田に言いかけたところを今度はラビに遮られる。
「なんでって、俺 医療班……」
「別にがしなくても……」
「よくないっ!って、神田!どこ行く……」
ラビに言い返していたら、神田は食べ終わった食器を持って立ち上がり、
その場を去ろうとする。
「そのまま じゃれていろ。俺のことは放っておけ」
「ちょっ、神田!」
「は俺よりユウが大事なのかっ?」
「ユウっつーな!! 」
「ええい うるさい 黙れワンコロども!! 」
勢いよく立ち上がり、机を ばん、と叩きながら怒鳴れば、
「いや、が一番うるさいさ」
ラビに さらっと返される。
「ああ!?何か申したか?」
「いえ。なにも 申しておりません」
あーもう、疲れたぞ俺は。
「はー……神田、辛くなる前に、医療室に来いよ?」
「余計な世話だ」
言い捨てて、神田は食器を片付けると、食堂を出て行った。
「なぁ 、ユウ、どうかしたんか?」
「ん?いや。ただ……あいつは抱えてるもんが多いらしいからな」
心にも身体にも、何だかよくわからないが、色々と背負い込んで
いるように見える。
詳しいことは本人が何も語らないから知らないけれど……。
「……ユウは、ずるいさ……」
「何?どうした?ラビ」
「俺のを ひとりじめしてる」
「は?」
突然何を言い出すのかと思えば……
「俺の、なのに……ずっと、他の男のことばっか……」
「ちょっと、ラビ……お前、何……」
「……」
すっと体勢を立て直したラビを目で追うと、あごに指をかけられ、
くっ と上を向かされた。
「ちょっ!ちょちょちょっっ!ラビっ!?」
そのまま顔を近づけられ、キスをされそうになって、
慌てて遮ろうとするが。
「まて!こら ラビ!」
「いやだ」
「んっ!んーっっ!」
抵抗は あっさりと流され、唇を奪われてしまった。
「あっと、忘れてた」
「……けほっ……何?」
思いきり吸いつかれたせいで少しばかり噎せてしまいながら、
ラビの言葉に問いを返す。
「ハッピーニューイヤー 今年もよろしく!」
「は?」
「え?明けたでしょ?新年。ごあいさつ」
って、まさか……
「それ言うために来たのか?」
「ん、いや。ニューイヤーえっちしようと思って」
「ぶっ」
何てことを言いやがるんだ こいつはっ!!
「お前なぁ……」
「え、、もしかして嫌……?」
「あのなぁ……。誰も そんなことは言ってないだろ」
「え、じゃあ……!」
途端に ぱっと輝くラビの顔を見ながら、俺の胸中は苦いもので
満たされていく。
「だけどな、取り敢えず 1つ、これだけは言わせろ」
「何?」
「ここは大衆集う食堂だスカポンタン」
「……あ……」
そう。ラビが ここに入ってきてからずっと、俺たちは注目の的で。
それは神田が去っても変わっていなくて。
つまるところ、俺たちは公衆の面前で痴話喧嘩よろしく言い争った挙句に
キスシーンまで曝してしまったわけだ。
今、俺の視界に入っているだけで20人ほどの人間が
フリーズしているのが分かる。
あーあ、どーすんだ これ……。
「まあ、いいさ」
「へ?」
いいって何が、と問う前に、
「取り敢えず、の部屋でいい?」
にーっこりと笑ったラビは、がばっと勢いよく俺を姫抱きに抱え上げると、
テーブルの片付け誰かよろしく、と言いおいて、食堂を出ようとする。
「ラビ……人の話聞いてたのか?」
溜息を吐きながら問うてみれば。
「。愛してるさ」
返ってくるのは答えではない。人の話は ちゃんと聞いとけ頼むから。
もう何を言うのも面倒になった。
俺を抱き上げたまま食堂を出るラビに身体を任せたまま、
食堂の入り口から中を見れば、ジュリーだけが、とってもあったかい目で
俺たちを見守っていた。
〜End〜
あとがき
ラビが子供っぽくなりすぎた(苦笑。
アレンくんが教団に入る前の お話。
医療班所属の主人公は初めてですねー。
教団の医療設備がどんなものか、興味大。
大型病院並みだと色々と美味しいなぁ…。
新年早々妄想過多です(笑。
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