8.あのときの表情





俺を抱く神田の顔は、ひどく扇情的だ。


「あ、あっ……んぐっ」


ひざの上に乗せられ、向かい合う形で、尻の奥には彼の熱。

下から突き上げられて、快感と、少しの痛みが俺を支配する。


快感に踊らされながら、見下ろす先の神田は、きつく眉根を寄せ、

目を眇めて、己の快感を追っている。

その目が、不意に俺を見上げ……


「なんだよ」

「っ……なん、でもな……あっ」

「くっ」


目が合った途端、きゅうっ、と俺の中が彼を締めつけてしまう。

突然のそれに、神田が呻いた。


「っ、! いきなり何しやがる!」

「や、ちが……っ、だって……っ」


もう何がなんだかわからなくて、言っていることもめちゃくちゃで、けれど

1つ、わかっているのは、あんな顔で俺を見た神田が悪いということ。


男くさい、あんな顔で、怒ったように、睨み上げるように、俺を見た目。

その目に、快感を煽られただなんて、決して言えはしないけれど。


「あぅ、あーっ」


仕返しとばかりに突き上げは激しくなり、やがて動きづらいと、ベッドに

転がされ、覆い被さってきた彼に、また、どきりとして。


「あ、あ……っ、あんっ」


目を開けていられないほどに揺すぶられ、だけど、目を閉じてしまうのは

嫌だから、何度も何度も目をこじ開ける。


(あ、イきそうなのかな……だって、顔が……)


そう思った瞬間、ぐちゃ、とひどい音を立てて、神田のそれが、最奥まで

ぎっちりと捩じ込まれた。


「あああっ、んぅ、ぁっ」


腹の奥に、どぷりと熱が。

それを感じた途端、俺も、自身から、体液を迸らせていた。








  ※   ※   ※








「そんな怒ってばっかりだと、血圧上がりますよ神田!!」

「塩分も糖分も摂りすぎなお前に血圧心配されたくねぇよ、このモヤシ!」


ぎゃあぎゃあと、やりあう声が聞こえるのは、教団内の食堂。

どうもアレンくんとは折り合いの悪いらしい神田は、いつも、ただでさえ

仏頂面なのに、さらにひどい顔になっている。


「やっぱ、神田がかわいいのは、イくときだけか」


あのときの表情だけは、いつもとても可愛いのを、知っているのは

俺だけらしく、それはとても気分がいい。


俺がつい口から零してしまった爆弾発言は、幸い誰の耳にも届かなかった

らしい(神田とアレンくんがうるさくて助かった)。

あと数十分後に始まる激務の前に、俺はただ笑って、愛しい彼を眺めていた。













〜End〜





あとがき

また名前変換の意味がなくなるところでした(爆。
主人公視点だとどうしてもね……。
1回神田が呼んでます。さてどこでしょう(笑。

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