甘く痛いキスは





縛られて、頭上に掲げられた手首は、もうとっくに痺れていて、

ベッドヘッドに繋がれた鎖が、がちゃりと音を立てるたび、

びりっと、むず痒いような痛みが走る。

けれど、それすらも快感となって、俺の大事な所は、どんどん

充血していく。根元を縛られているから、熱は溜まるばかり

溜まって、痛みさえ生む。


「あーあ、また おっきくなったんじゃない?」


素っ裸で、仰向けに拘束されて、大きく開かされた足の間、

からかうように言って哂うのは、ぼさぼさ頭のメガネの男。

名前は、ティキ。


「もう痛いでしょ?」


つう、と指先で裏筋を辿られ、もどかしい快感が走った。


「わか…ってんならっ…ぁ…解け、よっ…それっ」

「そう言われてオレが、解いたげたことあった?」


笑いながら さらりと言ってくれる内容は残酷で。


「ああ、なかったね、そういえばねっ」

「そ。だから、あきらめろ」

「っあぁっ!んーっっ」


ヌっと、ティキの長い人差し指が、震える熱の先端の小さな穴に

潜り込んだ。

頭の奥が焼けてしまいそうな激痛が走り、俺は身を捩らせる。


「あれ?痛いか?」


ぐりぐりと指を動かし、さらに深く潜り込ませようとしながら、

ティキが意外そうに聞いてくる。


「っ…たいにっ…きまっ、て……っっ」


敏感な部分に施される無体に、額には脂汗さえ滲んでくる。

痛い、痛い、痛い。痛いなんて、生易しいものじゃないかもしれない。

神経が焼け切れてしまうのではないかと思うほどの、鋭い熱さが、

その場所から頭の奥に飛び火する。


ぐらぐらと眩暈がしてきて、もういっそ、このまま意識を手放して

しまいたいと願う。

しかし、痛みが それを許してはくれない。


「っかしーなー、気持ちいいって聞いたのに」

「な…に、がっっ」

「ん?尿道責め。本当に気持ちよくない?」

「っっ…吐…きそ……だ、バカ…」

「なーんだ。残念」


つぽっと音を立てて指が引き抜かれ、ほっと息を吐く。

あそこからは、じんじんと痺れているような感覚が

湧き上がってきている。


ひどい痛みから解放されたことで、根元を縛られたままのそこは、

その痺れを快感として捉えたらしく、凝る熱が増した気がした。


「ほんとに気持ちよくなかった?」

「…あのねぇ…」


いくら先走りで ぐちゃぐちゃに濡れていたとはいえ、いきなり

抉じ開けられて、太いものを押し込まれたら、痛いに決まっている。


「あ、そか」

「そっか、じゃねぇの」

「だって、後ろは慣れてたから」


ちゃんと慣らしてやんなきゃいけねェって失念してた、なんて

笑顔で言われるとムチャクチャ腹が立つ。


「じゃ、ちゃんと慣らしてやろ」

「は?」

「ここ、女の子みたいにしたげる」


くちくちと、今度は先端のほんの入り口(正確には出口だが)だけを

爪で掻き混ぜるようにされて、這い上がる快感に腰が跳ねた。


「っ…寝言は、寝て言え」

「起きてるから 寝言じゃないな」


ああ言えば こう言う……。


「だから、それが寝言だって……」

は起きてて寝言が言えるんだ?器用だね」


このヤロウ……。


「もういい、やめる。これ解け」

「え、いやだ」

「いやじゃなくて」

「なんでオレが、やめてやんなきゃなんねェのよ」


にたりと、その口元が嫌な笑みを浮かべる。

な、なに?何だ?もしかして、俺、何かされんの!?

いや、今、何かされてる最中だけどさ。そうじゃなくて……


「色々 突っかかってくるも可愛いんだけど」

「え、ちょっ、それ何……」

「ん?ちょーっと黙ってもらおっかな、ってね」


かちゃ、と音を立て、ティキが何かビンのようなものを取り出し、

蓋を開けた。

にやにやと笑って、その中身を口に含むと、そのまま

俺に口付けてくる。


「や、…んんっっ」


一体何を飲ませる気なのか。

顎をつかまれ、閉じようとする口を抉じ開けられる。

つるりと舌が入ってきて、同時に何か甘いものが喉を伝って

体内に流れ込む。

何とか飲み下す量を減らそうとするが、きつく舌を吸われて

それが叶わない。


「んくっ…ん……ふっ」

「ん…、やっぱ甘ェなぁコレ…」

「何…飲ませ……」


きつい口付けに、すっかり息が上がってしまった。


が、すっごく可愛くなる お薬」


その語尾にはハートマークが飛んでいるに違いない、

甘ったるい声で言ったティキが、まだ熱を湛えている俺の自身を

つん、とつついた。


「っっ……!! 」


途端、走った刺激は、強烈な射精感を俺にもたらした。


「な、にっ……これ…っっぁ…」


つつかれただけで、イってしまいそうだった。

いや、根元を縛られていなければ、今、俺は確実に

吐精していただろう。そんな刺激だ。


「うわ、効果覿面?薬効きやすいな」


嬉しそうに言ったティキが、俺の自身の根元に連なる

双球を握り取った。

ぎゅっときつく握られ、本来なら酷い痛みをもたらすだろう

その場所から、言い知れぬ快感が這い上がってくる。


ああ、と思った。俺はもう逃げられない。

ここまで感じやすくなった身体は、もう俺の意志には

従わないだろうことは、想像に難くない。

これから与えられるのが、気を遣るほどの快感だろうことも……。


「ティキ……」

「何?」

「手加減……して…」


上がる息を抑えながらの懇願は。


「酷くして、の間違いだろ?」


きついの好きだもんな、と笑うティキの前に、

ぺちりと叩き落された。








  ※   ※   ※








この状態で きつくされたら、発狂するかもしれない。

そう感じた直後、頭の奥が鈍く痛み始めた。

ティキが、ゆっくりと俺の身体を手の平で撫で始めたのだ。


ゆるゆると身体を辿られ、先程、尿道口をくじられた時とは違う

甘だるい痛みが、こめかみあたりに溜まる。


「っあ…?」


ぬるりと、唐突にティキの手が ぬめった。


「な…に…?」


甘ったるい香りが、だんだん広がってきて、嗅覚を刺激した。


「チョコレート。今日、バレンタインだから」


に、と笑ったティキは、固形のホワイトチョコを握った手を、

俺の目の前に翳す。

とろりと、ティキの手の中で、それが溶ける。


ある程度溶けたところで、ティキの手は、俺の身体へと落ち、

それを塗り込めていく。


「ぅあ…ぁっ」


ぬるぬると、自身にそれを塗られた瞬間、鈍かった頭痛が急に

鋭利な痛みに変わった。

やはり、男の子ってのは大事な所への直接的な刺激が

一番感じるらしいなと、気を逸らすように思考を巡らせる。


本当は、今すぐに根元の戒めを解いて、イかせてくれと強請りたい。

けれど、それは、かなり癪なのだ。


「やっぱ白にしてよかったな」

「な…に、が…っ」

「チョコレート、さ。白って何か やらしくていい」


ほら、と腰を抱えられ、足が頭の脇に付きそうなくらいまで上げられる。

そうなると、否応なしに それが目に入る。


「う…わ…」


根元を縛られて赤黒く変色している自身に、白いチョコレートが

絡み付いている。

その上、先端の小さな穴からは、チョコレートとは色の違う白いものが

ぷつぷつと溢れてきていた。


それを確認した途端、その小さな穴が ぱくぱくと開閉した。

溢れる体液の量が増したのは、羞恥心が快感を煽ったせいだろう。


「サイアク…っ」

「冗談。サイコーだっての」


言って、ぺちりと俺の尻を叩いたティキが、ついでだと呟いて、

この体勢では すっかり露になってしまっている後孔に唇を寄せた。


「う…そっ……や…」


ぺろりと入り口を舐められ、くん、と舌が潜り込んでくる。


「や、やだ…やっ…舐め……っっ」


そこを舐められるのは好きじゃない。

というか、そんなところを舐められて気持ちよくなるのが嫌だ。


「も、早…くっ」


いっそ、さっさと貫いてくれればいいと思うのに。

さっき言われた通り、俺のそこは男を入れられることに

慣れているのだから。


「まだ、ダメに決まってんだろ?」


舌に代わって、今度は指を突き入れられる。

けれど、ゆるゆると内壁を掻き回すだけで、強い刺激はくれない。

さらに……


「ひぁ……っん!あぁーっっ」


チョコレートにまみれた自身を、すっぽりとティキの口腔に捉えられ

きつく吸い上げられた。

目の前が真っ白になるほどの快感。

放出の叶わないそこには、酷すぎる仕打ちに、頭がガンガンと

割れそうに痛む。


自身に付いたチョコレートをすべて舐め取られ、その刺激に、

力が入って窄まる後孔を、2本の指で撹拌されていく。


薬のせいか、身体がおかしい。

いつも触ってほしいと思う箇所が、いつもより じくじくと疼く。

けれど、実際そこに触れられれば、それは疼きへの慰めではなく、

過剰な刺激になってしまい、余計に辛い思いをすることになる。


「そろそろ、蕩けたか?」

「ん…?」


足を下ろされ、普通の仰向けの体勢に戻される。

一度すべての愛撫から解放されて、ほっと息を吐いた。

身体は熱を湛えたままだけれど、頭はくらくらとして、

もう疲れきってしまっている。

と、つぷ、と感覚があって、下腹部が びくりと痙攣した。


「なに…?」


何をされているのか分からず、問うた声が幼げに響いた、

と思ったら、急激な痛みがきた。


「あぁっ…ぁ…ひ……ぃあ…っっ」


尿道に、何かが、入っている。

突き刺すような痛みが、全身を巡った。


「心配すんな。ただの棒だ」


一体どこから出した、なんて、ふと正気に返った思考は、

くっと棒がさらに身体の奥に入る感覚に一瞬で霧散した。


「い…たいっ…」

「我慢我慢。傷つけやしねェよ」

「っ…ざけ…な…っっぁ…ふ、ぅ…っ」


軽く投げて寄こされる言葉に対する反論さえ朦朧としたものに

飲み込まれていく。


こんな、痛くて恥ずかしいことをされてさえ、俺はティキを

突き放せない。

時折見せる、物憂げな表情が、俺を捕らえてやまないから。

身体を与えて、彼の心が安らぐなら、俺の身体など、

いくらでも与えてやろうと思ってしまう。


「ふ…あ……っんぐっ」


尿道の深いところまで棒で犯して満足したのか、その位置で

棒を押し込むのをやめ、ティキは再び俺の腰を抱えた。


ずるりと、ティキの熱いそれが俺の後孔に押し込まれる。

ずっしりとした質感に埋め尽くされ、ぴりぴりと背すじを

伝ってくる快感に、何故か安堵の溜息が零れた。





耳元で、囁くように呼ばれ、ぞくりと身を竦めた。


「あ……」


答えようと開いた唇に、小さな塊が押し付けられる。

くっと口腔に押し込まれたのは、甘い甘い、チョコレートの欠片。

それを味わうより先に、深く口付けられた。


「ん…っっ」


舌先で、チョコレートを口中に塗りつけられる。


「んんっ…んっ、んーっっ」


同時に、一番感じる場所をティキの熱で強く擦り上げられ、

俺は 放出を許されないままに絶頂を迎えた。


甘ったるい口腔で舌を絡めあったまま、何度も何度も、吐精の無い

絶頂を極めさせられながら、心だけは、何故か安堵に、凪いでいた。















〜End〜





あとがき

うっわ何これ。中途半端にエロくない。
もっとじっとりねっとり濃厚なエロが書きたいのに
何だこれこの中途半端ーっっ(叫。
すみません。文章力と言語力と発想力が足りません。
あと余裕(沈。

また、ティキぽんで夢書きたいと思ってます。
エロエロリベンジしたいです!(笑。

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