君が笑っていてくれれば、それだけでいいとさえ思うよ。
「は、ここが好きなのかな」
「あれ、ウラタロスだ」
入り口に立ったウラタロスを認めて、はへにゃりと笑った。
この頃は、イマジンが出たと言ってみんながわいわいやっていると
いつの間にかふらりと、この部屋へ来るようになっていた。
ジークのいた部屋。
それに最初に気付いたのがモモタロスだというのが、ウラタロスには少々
許し難い事実であるのだが。
「んー、ちょっと違うんだよねぇ」
へにゃ、と相好を崩したままのに近寄り、ウラタロスはひとりごちる。
「ん? なにが?」
「いや、こっちの話」
が、きょとんとして首を傾げるのに合わせて、ウラタロスも、ちょい、と
同じ方向に首を傾けてみせた。
もっとちゃんと、笑えばいいのにと思う。
こんな、直前までの愁いが滲み出たような顔で、笑って欲しくないと思う。
もっともっと、心のそこからの笑顔を見せて欲しいと思う。
「ウラタロスって、ときどきわけわかんないよね」
「そうかな。僕の中では理路整然としてるんだけど」
「頭こじあけられたくなかったら、その理路とやらを端折らず説明してくれる?」
「って、ときどきものすごく鬼畜な発言するよね」
「そうだね」
「あれ、そう返されたら続かなくない? この会話」
「そこを続けるのが口八丁の力量の見せ所じゃない」
「の僕に対する認識ってそうなの?」
「うん、最初からほぼそうだね」
「うーん、些かショックだよ……ところで」
「ん?」
「首傾げっぱなしで、そろそろ疲れてきたんだけど」
「ああ、そういえば」
ウラタロスが同じ方向に傾げるから、何となく戻せなくなったと言って、は
こきこきと首を振りながら笑った。
「ああ、うん。それだ」
見たかったの笑顔を引き出して、ウラタロスは満足気に笑う。
「ん? 何が?」
「いや、こっちの話」
が、今度は逆側に首を傾げたが、ウラタロスは、今度はまっすぐ
を見つめたまま。
「ところで」
「ん?」
「それ、首傾げるの、可愛くて困るんだけど」
「は? 何言っ……」
が言葉を出しきる前に、ウラタロスの口が、のそれに、ちょい、と
触れた。
「はは。ごちそうさま」
笑って、ウラタロスは、カチコンと凍り付いているを置いて部屋を出た。
「っ……ウラタロスーっっ!!」
数十秒後、はっと我に返ったの声が、食堂車へ向かうウラタロスの
後頭部にこつりと当たった。
「あーあ、センパイにバレたら、カメ鍋にされちゃうかな」
ひとりごちるウラタロスは、けれどひどく楽しそうに、くつくつと笑っていた。
〜End〜
あとがき
でもこれ、ちゅうの意味なんかわかってないんですよ主人公。
うーん……じれったい話になりそうだ。
読んでじりじりしてもらえたらいいな、と(なんて迷惑な)
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