ごちゃごちゃ考えて、ぐちゃぐちゃ悩んで。
それもお前のええとこやけど、そればっかじゃあ疲れてしまうやろう?
せやから……なぁ?
「なんや、またここにおるんか」
「だって、あっちじゃモモタロスがリュウタを追いかけ回してるじゃない」
巻き込まれたくないもの、と笑うは、でかいベッドに腰掛けて、
分厚い本を読んでいた。
「元凶が何言うてんねん」
「ひどいなぁ、もとはといえば、ウラタロスの悪ふざけのせいなのに」
「なんや、しとらんのはモモの字だけか」
「あとキンタロスもね」
「してほしいんか?」
「や、遠慮しとく」
「はは。即行でフラれてしもたな」
なんだかもう活字を読む気にはなれなくて、は、ばたんと本を閉じる。
モモタロスとリュウタロスが叫びまくっているせいで、キス事件は全員にばれ、
このぶんだと、ウラタロスの件も、もうみんな知っているだろうと思う。
「ほんともう、ウラタロスの悪戯のせいでさんざんだよ」
がためいきをつくと、キンタロスが少し困ったように笑いながら、
の隣へと腰掛けた。
「あー、それなー……」
「なに?」
「そこが間違ごうとるから、あいつらが空回っとんのや」
「は?」
わけのわからないことを言われ、思わずぽかんとしてしまうの顔を見て、
キンタロスは、ぷっと吹き出した。
「まぬけた顔のも可愛えけどな」
「なにそれ……わけわかんないよ、みんなして」
モモタロスは軽いスキンシップも避けるし、ウラタロスは「こっちの話」とやらを
呟いたあげく、変な悪戯をするし、リュウタロスはそれをうらやましいと言って
押し倒してくるし、キンタロスはそれについてのの考えを間違っていると言う。
「まあ、そう悩まんでもええやろ」
ぽんぽんとの頭を叩いて、考え込むなと諭すキンタロスは、自分が考え事の
たねを増やしたことに気付いているのかいないのか。
「答えを知ってて教えてくれないって、結構きちくだと思うんだけど」
「ははは」
「笑ってごまかすの?」
「ごまかされとけ。そのうちわかる」
「もう、ほんっと きちく!」
笑ってごまかすからごまかされろなどと、さらりと言ってくれるキンタロスに
腹を立てつつ、しかしそれがキンタロスのキンタロスたるゆえんかと、妙に
納得してしまったは、それ以上考えることを今は放棄しようと決めた。
「さてと」
話は終わりとばかりに伸びをして、キンタロスはぼすんと背中からベッドにダイブする。
「あー、やっぱりここは、ふかふかしててええなぁ」
言うなりキンタロスは、ぐごご、といびきをかいて寝始めた。
「言いたいだけ言って寝るし」
ひとに考え込むなと言ったのだから、気を紛らわせるのに付き合ってくれてもいいだろう
と思うのに、ひとりだけ、すこんと眠ってしまうなんて、ひどくはないだろうか。
「あーあ。僕も寝よ」
活字を追える気分でもないし、たまには昼寝もいいだろうと、はキンタロスの
隣に寝転がった。
眠る前にいろいろ考えてしまうだろうかと思ったが、眠りは案外とはやく、すとんと
落ちるようにやってきた。
の呼吸が、すっかり寝息のそれに変わる頃、キンタロスがむくりと起き上がった。
「まったく、世話のやける奴や」
小さく苦笑しつつ呟くキンタロスは、ここのところが考え込みすぎて、
なかなか夜、寝つけないでいるのを知っていた。
それが、キス云々の件だけではないことも。
「ゆっくり寝とけ。夕飯には起こしたるから」
タオルケットを引き寄せてかけてやり、の髪を撫でたキンタロスは、
ふとした誘惑に駆られる。
もし知れば怒り狂うだろうモモタロスのことを、ちら、と考え、けれど、
言わなければバレやしないと、素直に誘惑に負けることにした。
「ん……」
眠るのひたいに、触れるだけのキスを落とし、満足気に笑って、
キンタロスはすっと立ち上がり、部屋を出る。
「おっと、あかん」
窓ガラスに映った自分の顔が、思ったよりもニヤけていることに気付き、
ばちんと両頬を打って、それでも上機嫌は隠せないまま、向かう先、
食堂車からは、まだわいわいと、追いかけっこの声が聞こえていた。
〜End〜
あとがき
あー。まさかキンタロスがこんなに甘いことになるとは。
予想外です、どうしましょう。
キンタロスはパパ的というか兄的というかそんな感じの位置設定で
書き始めたんですけどね……なにデコちゅーかましてんだお前。
で、例によって主人公は気付かないし。つか寝てるし。
え、ちょっとこれほんとどうなんの(行き当たりばったりにも程がある)
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