君を愛していたいんだ。



ロイとマースと俺は、士官学校時代からの親友で、

いつも3人一緒にいた。


俺には 秘密があった。

彼らには決して言うことのできない 秘密。


俺は…ずっと ロイのことが好きだった。

いつからか、恋をしていた。


けれど、俺は気づいていた。


ロイはマースに恋をしている。


そんな素振りは見せていないようで、しかし、同じ気持ちを抱く俺には

わかりすぎるほどに わかった。


彼もまた、言えない秘密を抱えていたのだ。







しかし、秘密を抱え、葛藤の中で守ってきた秩序は、

たった一言で 打ち砕かれることになった。




「俺な、グレイシアと結婚するんだ。」



マースの言ったそれは、俺を唖然とさせ、

ロイに突き刺さった。






いつかは…こうなると 思っていた。

と、言うのは嘘。

俺はてっきり、マースもロイのことが好きなんだと思っていた。

思っていただけで、確証はなかったけれど。








結婚式の席で、

笑顔で「おめでとう」と言ったロイに 胸が痛んだ。


式の後、

教会の敷地内にある 小さな池のほとりで、

一人たたずむロイを見つけ、

耐えられなかった。


「ロイ」

…」


ロイが振り返る。


「ロイ、俺じゃ ダメか?」

「…?一体何を…」

「代わりでいいんだ」


ロイの言葉を遮って、


「マースの、代わりでも…いいから…」


勢いで喋る。


「俺…ずっと、ロイのこと 好きだから」


あっけに取られている ロイ。


「………」


沈黙が 痛い。


「…ごめん、変なこと言ったよな。忘れてくれ。」


これで 全部 崩れた。

俺が、壊したんだ。


いたたまれなくて、くるりと ロイに背を向けて、歩き出す。


と、がしっ と、腕を掴まれ、引き戻された。


次の瞬間、俺はロイの腕の中。

…心臓、止まるかと思った…。


「なっ…何?!」

「…離れていくな」

「え…」

「お前まで、俺から離れていくな。」


あぁ…と、思った。

この寂しん坊は…。だから 愛しいんだよ。


「俺は、離れない。何があっても。」


君を 愛して いたいんだ。



「愛してるよ、ロイ…」









〜End〜




あとがき

報われない主人公。悲恋というほどでもないけれど。
切ない系が書きたかったんです。
それにしても…ほとんど名前を呼ばれてませんね…。

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