風邪ひき注意報



風邪を引いた。

朝から少し だるかったが、昨夜遅くまで書類と格闘していたせいだろうと、

特に気にせず 出勤した。


それが 間違いだったことに気付いたのは、昼を過ぎた頃。


「大佐?顔、赤いっスよ?」


書類を提出に来たハボック少尉に そう言われた。

そういえば 少し熱っぽいような気もする。


「医務室、行ったほうが いいんじゃないっスか?」

「ああ。後で行く」

「後で…って…」

「あと少しで、一段落するのでね。」


今ここで 席を外せば、もう やりたくなくなるのは 目に見えている。


「はー…中尉は どこ行ったんですか?」

「彼女なら 今日、明日と 南方に出張しているが?」


それがどうした、という意味を込めて 語尾を上げる。


「あ、それでか」


何か納得したような 少尉。

こっちは さっぱり納得いかないんだが…。


「薬、もらって来ますから、大人しくしてて下さいね。」

「は?」

「失礼します」


そう言うと、少尉は部屋を出て行った。

大人しく…ねぇ…。

取り敢えず 仕事を片付けてしまおうと、ペンを握りなおした。








  ※   ※   ※







「失礼します」


しばらくして、入ってきたのは、


!」


左手に 水の入ったグラスと小さな袋を乗せたトレイを持った


「うわー。ほんとに 赤いや。」


デスクに近づいてきたが、そこにトレーを置いて、私の額に 手を当て、


「あー…」


と 呟くと、今度は こつん と、額を当ててきた。


「っ…


びっくりした。

つい、そのままキスしたい などという思いが頭をもたげる。


「なぁに 考えてんだよっ」


ぺちり、と額を叩かれて、


「やっぱり 結構 熱あるみたいだな。ほら、これ飲んで、今日は早退しろ。」


薬を差し出される。


「いや、しかし…」


まだ片付いていない書類が…


「珍しく 真面目なのは、熱のせいか?」

「なんだ、その 珍しい、というのは…」

「本当のこと。ほら、帰った帰った。俺が出来る分は、俺がやっとくから。」

…」


じーん、として を見つめていると、


「あー、もう!さっさと薬飲んで 帰れって。」


が 怒り始めてしまったので、取り敢えず薬を飲む。

水を飲み干したグラスを片付けようと 立ち上がった。

途端、世界が 揺れた。


「ロイ?!」


の声が、少し遠くに 聞こえた。








  ※   ※   ※







「言わんこっちゃない」


目を覚ますなり、聞こえたの声。


「だぁから 早く帰れって言ったのに…」


見渡せば、そこは自室の 自分のベッド。


「こら、起き上がるな!」

「なぜ、が ここに?」

「なぜ、って…ロイが倒れたからだろ。」

「倒れた…?」

「そ。倒れたから医務室の先生を呼んだら、心配ないから連れて帰って寝せとけって。」


おかげで 俺まで早退することになった、と ぼやく


「ほら、熱計って。ただの風邪だってさ、よかったな。水、替えてくるから。」


体温計を受け取ると、は 氷水の入った洗面器を持って 出て行った。








  ※   ※   ※







「37.8度…、だいぶ下がったな。」


体温計を片すの背中を眺めながら、

額に乗せかえられたばかりの 冷たいタオルの上に手を乗せる。

………気持ちいい…。


「ロイ、夕飯 ミルクのリゾットでいい?」

「ああ、ありがとう」


食欲はないが、が作ってくれるというのだ、

食べないわけには いくまい。

でも、その前に…





タオルを かえようと 近づいてきたの腕を取る。


「ん?」

「熱がある時は 汗をかくといい、と 言うな。」

「そうだね。で、何?」

「運動…しないか?」

「は?何言っ…うわっ」


言いかけたを そのまま 引き倒す。


「いいだろう?」

「いいわけ ないだろ!」


その状況に、言葉の意味を理解したらしいは、

私の腕の中から逃れようと 胸を押す。


「悪化するってば!」

「しないよ。」

「する!…んぅっ」


うるさい口は キスで塞いで、そのまま下腹部に手を這わせる。


「ほら、もう勃ってきた。」

「ばかロイ…」


悪化しても知らないからな、と呟いて、

大人しく されるがままになった。








  ※   ※   ※







「何っっっで、風邪が一日で治るんだよ!」


翌朝、ベッドで目を覚ましたは、

熱っぽさを訴え、私のついでに と、熱を測っていた。

どうやら 見事に うつったらしい。


に うつしたから、かな。」

「ふざけんな…」

「じゃあ、汗 かかせてあげようか?」

「いらん!」


風邪をひいたとは 思えないくらい元気なに苦笑して、


「今日は ここで寝ていていいよ。帰りは10時頃だ。一人で大丈夫か?」

「大丈夫だから、さっさと仕事に行ってくれ。」

「じゃぁ、行ってきますのキス」


ちゅ、と 唇にキスを落とせば。


「いってらっしゃい」


と、小さく呟く声が聞こえた。


「行ってきます」


家を出て 司令部へと向かう。

しかし…熱に潤んだ瞳というのも なかなか そそる…。




…帰った時に熱がさがっていなかったら…やはり 運動させようか。














〜End〜




あとがき

6月1日は61(ロイ)の日です。(勝手に。)
打ち込み作業の際、ひたすら眠かったので、
ミス連発している可能性があります。
メールかweb拍手に ご指摘下さい〜。


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