I Will




きっと 恋をしていた。

彼を想う自分の心を抑えきれなかったのは、それが 恋という

ある種の快楽を伴った衝動を、自覚していなかったせいだと、今は そう思う。


壊れた人形のように、ただ 涙を零し、俺を受け入れていた

強姦という 最悪の方法で、俺は を 引きずり落とした。


その後 すぐに 姿を晦ましてしまったの行方を知ることが出来ぬまま、

後悔の涙に 頬が濡れる日々を送ること三ヶ月。

それは 偶然という ともすれば運命とも言える形で 俺の前に現れた。


「っ…

「ジャン…」


仕事帰り、ふらふらと歩いていた俺の正面から、が歩いて来た。

流れるのは、当然 気まずいとしか言いようのない空気。


「よ…ぉ、久しぶり…」

「そう…だね…」


向き合って 突っ立ったまま、ぽつりと口にしたコトバに

返って来る反応があるだけマシなのか。


「あ…のさ、」


あの時は、と話を持ち出そうとして、やめた。

抉っていい傷ではない。

にとっても、俺にとっても。


「ごめんな」


本当は 謝りたくなんかなかった。

謝るようなことを したつもりはなかった。

ただ、愛しているのだと 伝えたかった。

けれど、それは 許されないことなのだと、わかっていた。


「今、どこにいるんだ?」


姿を晦ませて以降、が どこにいたのか知りたかった。

他意はない。


「今…は、マスタング 大佐の ところに…」

「そっか。」


きっと、彼が を癒し その心を開いたのだろう。

俺が 閉ざさせてしまった の心を 解きほぐしたのだ、彼は。


「な、


だから、は 俺と会っても 逃げなかったんだろう。


「今、幸せか?」


の中でも、整理をつけたかったから、

逃げずに言葉を返してくれるのだ。


「…うん。」


微かに笑って 頷くを見て、俺は ほっと息を吐いた。


「そっか。良かった。」

「ジャン…」


笑って言った俺を見て、が 何か言いたそうに口を開いた。


。もう、サヨナラだ。」


それを遮って告げたのは 別れの言葉。


「ジャン…?」

「ごめんな、。それと、ありがとう。」


許されなくても、逃げ出さないでくれたことが 嬉しかったから、そう言った。


「俺のことは、出来たら 忘れてくれ。」


の脇を すり抜けて、振り返らぬまま歩を進める。

きっと 自分は 忘れることなど出来ないけれど。

この痛みとは、一生付き合っていく覚悟は出来ている。


頬を 一筋 伝う 水。きっと これが最後。

傷付けたと同じくらいに傷ついて。

自業自得だと 笑えるほど 自分は大人じゃないけれど。

いつか、大切なものを 守れる人間になりたいと そう思うから。

流れ落ちた涙を 拭うことはせず、ただ 足を進めた。


と、小さく「さよなら」と言う声と、人が走り去る気配。

ああ、行ってしまったのだ、彼は。

そう思った途端、つきり と胸に走った痛みは、多分 俺の未練なのだろう。


…」


この名を呟くのも、これで 最後にしよう。

今は、痛みだけを抱えていようと思う。

いつか、許される日まで。

自分で光を 見つける日まで。


さようなら 。 ありがとう。


もう一度 心の中で繰り返して。

俺は 想いを 断ち切った。














〜End〜





あとがき

大佐中心サイトのくせに、企画の最後が何故かハボック。
そして更に 初ハボのくせに悲恋。ああごめんなさい。
今までで一番難しかったんですよ『I Will』。
歌詞もタイトルも使い辛い!!って悩んだ末の作品です(沈。

最後まで お付き合い下さり ありがとうございました。

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