4.キス





口腔に含まされる舌は甘く、促されるままに自らの それを絡めて吸えば、

さらに きつく吸い返され、ぞくりと背中に快感が走る。


「ん…んっっ」


濡れた口腔から響く音が性感を煽っていくから、いつしか兆し始めた下肢の熱を、

誤魔化そうと身を捩った。


「ふ…ぁ…っ」


ようやく唇を離されて、吐いた息は ひどく熱い。


「可愛い…


ベッドに背を預け、ロイに圧し掛かられた状態で、ゆるゆると髪を撫でられる。

初めての経験を、しようとしている自分が恥ずかしくて、ぎゅっと目を閉じた。


クールビューティ、なんて言われて、自分でも顔がキレイなことは認めるところ

だったけれど、もともとの性格のせいで、23になる この歳まで、色事とは無縁だった。

女性とも そんな経験はない。


そんな自分が、男に抱かれようとしている。彼の目に、肌を曝そうとしている。

ひどいほどの緊張が、俺を支配していた。


「怖い?」


問われて、ゆっくりと目を開ける。ロイが苦笑しながら俺を見下ろしていた。

ロイと俺が恋人という関係になったのは つい先月のことで、俺の働いている

バーに、通ってきていたロイに口説かれたのが きっかけだ。と言っても、

口説かれ続けていることに気付かず、好きだ愛していると はっきり言われて

ようやっと それまでの言葉が自分を口説いている それであったと

知ったという鈍さっぷりで、ロイからは苦笑を買ってしまったのだけれど。


「怖くても…やめてあげられない…」


優しく甘く耳に注ぎ込まれるのは、少し意地の悪いセリフ。でも、俺の内股に当たる

彼の雄が、あつく熱を持っているから、それが本気であると知れる。


「あ…」


シャツの前が肌蹴られ、胸の小さな突起にロイの長い指が触れる。

そんなところに性感があるなどとは考えたこともなく、なぞられるたびに

じわりと広がる不思議な感覚が、腰の奥へと熱を溜めていくことが 変に恥ずかしい。


「あ…やっっ」


徐々に下がったロイの手が、俺の下肢から服を剥ぎ取った。

膝の辺りまで あらわにされ、熱を持った自身に指を絡められて腰が引ける。


「逃げるな」


低く、優しく告げられる命令。

甘やかしてくれない その声音に、とくりと心臓が音を立て、身体が甘く痺れる。

俺の意思には従ってくれない自身が、その痺れをロイに伝えてしまうのが

恥ずかしくて目を伏せた。


「やだ…ロイっ触らな…っ」

「触らないと何も出来ない」

「でも…っ」


自らの右手しか知らない雄は、ロイのキレイな手に握り取られて、

ひどいほどの快感に打ち震えている。

恥ずかしさに身を硬くした俺に、ロイは 小さく息を吐いた。


「触るのは、いや?」

「いや…じゃ ない、けど…でも…」


恥ずかしい、と告げれば、ロイは そこから手を離し、俺の髪を撫でた。


「じゃあ、キスは、してもいい?」

「ん…」


そんなことを聞かないで欲しい。答えることだって恥ずかしいのだ。

けれど、彼の舌を自分の口腔内に感じることが ひどく心地良いと、

教え込まれてしまっているから、俺は誘惑に抗えない。

こくりと頷くと、彼の唇が、俺のそれを塞いだ。


「ん…ふ…ぅ、ぁ…」


口腔を掻き回され、余すところなく舐められて、ひくっと 雄が反応するのがわかる。

ロイの唇が離れ、今度は額にキスが落とされる。鼻の先、頬、首筋へと辿って、

きゅっと 胸の飾りを吸われた。


「あ…んっっ」


そんなところを舐められるのは恥ずかしいと思うのに、ロイの舌が心地良いから

抗うこともできない。


「や…ぁっ」


両側を同じくらい吸われて小さく声を上げると、ロイは そこから唇をずらし、

腹、へそ、と口付けていく。

柔らかなその感触に身を委ねていると、不意にその唇が俺の自身を掠めた。


「や…ちょ…っっ」


先端に、ちゅ と口付けられ、ちらりと舐められた。

それを視覚でも捉えてしまって、慌てて腰を引こうとした…が。


「キスは、してもいいんだろう?」


少しだけ意地の悪い口調で そんなことを言われ、先端の窪みに舌を這わされる。


「い…やぁ…あ、あぁっっ」


初めて そんなところを舐められる。

恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。

けれど、確実に快感を得て硬度を増す自身は、もっと、と強請るように揺れてしまう。

それに応えるように、ロイが すっと俺の自身を その口腔へ取り込んだ。


「ひぁ…っ」


柔らかい粘膜が、一番敏感なソコを包んでいる。

手で触れられるよりも強烈な刺激が身体中に快感として四散する。

ディープキスをするように舌で絡め取られて きつく吸われ、

俺は、何もわからぬままに 精を解放した。


「ふ…っく…っっぅ…」


残滓まで吸い取られ、ようやく離された唇は、そのまま内股に落ち、

ちりっとした痛みを 俺に与えた。

跡を残されたのだと気付き、言いようのない羞恥が這い上がってくる。


「やだ、ロイ…恥ずかしい…ってば」

「何故?」

「なぜ…って、そんなの…」

「キスはしていいって、言ったじゃないか」


言ってない!と叫びたくても、そう問われて頷いたのは自分だという

自覚はあるから、強く反論できない。


「だって…口だけだと思った…」


口の中で ごもごもと言うと、ふっとロイが笑った。


「そんなわけないだろう?身体中に、だよ。」


身体中にディープキスを、と 甘い甘い毒のような声が俺を絡め取る。


「そっ…恥ずかし…っ」

「恥ずかしくても、許さない」

「や…っ」

「君の全部が私のものだと、君の身体に 覚えてもらうよ」


伸び上がってきたロイの唇が俺のそれを塞ぐ。

青臭い感じに眉を顰めると、同時に一度果てた自身を その掌に捕らえられてしまう。

逃れようと腰を揺らしても、今度は離してもらえない。

それどころか、きつく揉み込まれて、軽い痛みと快感と、苦いような感覚が

そこから全身に広がって、抗う余裕を奪い去っていく。





名前を呼ばれながら 緩やかに髪を梳かれて、その不思議な安心感に力が抜ける。

もう片方の手で甘やかされている俺の自身は、再び熱を蓄えて快感に震え始めていた。


「ん…っ」


またロイの唇が身体に口付けながら徐々に下のほうへ辿っていく。

へその辺りまで来たところで、今度は右腕を取られ、指先から口付けが始まる。

腕の全体に口付けられ、脇の下を舐められて腰が跳ねた。次に、左腕、右脚、左脚、

と 本当に全身に口付けられて、ふとした場所にある快感を呼び起こされる。

左脚の付け根に口付けられ、そのまま屹立した自身にもキスを落とされる。

裏側に小さくキスをしながら、彼の手が俺の脚を ゆっくりと開かせていく。そして…


「ひぁっ…!やっやだっっ!」


本来なら、誰の目にも触れさせることのない小さな窄まりに、柔らかな唇が吸い付いた。


「やだっ…いやだロイっ!やめ…っ」

「やめない」

「やぁっ…汚な…っ」

「キレイだよ。小さくて、可愛い…」

「あぁっ」


ロイの舌が襞を舐め溶かすように動く。むず痒いような感覚が、

そこから ざわざわと広がり、いつの間にか その舌が中に潜り込んでいた。


「いや…いや…っロイぃっ」


本当に、そんなところにまでディープキスをするように舐め啜られて、羞恥に耐えられない。

舌が引き抜かれ、代わりに指を押し込まれても、俺はもう 何が何だか わからなかった。

一本の指で内壁を撫で擦られ、奥の方まで唾液を馴染まされる。


「んくぅ…っ」


指が増やされ 苦しさに喘ぐと、そんなことをされていてすら萎えていない自身を

口腔に含まれ あやされた。


「ひぁんっっ」


声を上げて仰け反ると、中にあるロイの指が当たる角度が変わって、

その違和感に泣きたくなる。


「んーっ…ぁ…ああっ!?」


けれど そんな感覚も、ある一点を擦られた瞬間、すべて快感に取って代わられた。


「ここか?」

「や…いやぁぁっ」


そこを揉むように押されると、思考が飛びそうなほどの電流が全身を駆け巡る。

苦しい。痛いとか、キツいとか、そういう類のものではなく、そう…感じすぎて苦しいのだ。


快感と言うには強烈過ぎる刺激に、身も世もなく乱れる自分を自覚することも出来ず、

ただロイの指が そこを寛げていくのを感じる。

3本に増えた指が、あの箇所を掠めながら中を開いていく。


「ぁ…く、ぅ…っ」


声を上げすぎて 喉が痛みはじめた頃、ようやく指を引き抜かれ、ロイが身を起こした。


「は…ふ…っ」

…愛してる…」

「ぁ…んーっ」


囁きと同時に腰を抱えられ、熱い塊が 入り口に押し当てられると、

ゆっくりと入り込んできた。

指で拡げられるのとは違う、もっと、何か 絶対的なものに支配されていくような

重苦しさがある。


「痛い?」


問われて首を横に振る。慣らされたおかげなのか、痛みは ないとは言えないが、

そんなに酷いものではなかった。


「ぁ…ぁ…」


奥の奥まで、押し開かれていく。

腰骨の当たる感覚があって、ロイが動きを止めた。


「入ったよ…全部」


言ったロイに口付けられ、口腔に その舌を受け入れる。

口内を掻き回され、同じように ゆったりと下の口も掻き混ぜられていく。


「んふっ…ぅ…」


下肢に与えられるものが、あまりにも熱くて、甘い甘い舌に、

助けを求めるように吸いついていく。

唇を合わせ、舌を絡ませ合ったまま、ロイの熱に あの箇所を擦られ押し揉まれる。

自身にも指を絡められて、絶頂を促す動きに抗えず 俺は

ロイの舌の甘さに酔いながら、白濁を放っていた。

最奥に熱い体液を叩きつけられる感覚に、離れた唇から 吐息が零れる。


「ロイ…」

「ん?」


呼べば返ってくる声は甘やかす響きしか持たず、俺は気恥ずかしさに目を伏せた。


「あ…のさ、」


とくとく と、落ち着かない心音が、さらに俺の羞恥を煽る。


「キス…して?」


言って、上目遣いに見上げれば、ほんの一瞬 軽く目を見開いたロイは、

ふっと 悪戯な笑みを浮かべた。


「それは、全身に?」

「なっ…!」


まだ する気!?と、口にしかけてやめた。

そうやってロイは俺をからかっているんだ。だったら…


「唇に、に決まってない?」


つん、と そっぽを向いて冷たく告げれば、ロイは堪えきれないように

くくっと 肩を震わせて笑った。


「まったく…君は可愛いな。」


なんて言って、俺の髪を撫でるロイ。

喚いて返しても、冷静に切り返しても、結局結果は同じだったらしい。


「ロイなんて きらいだ…」

「私は愛しているよ、


拗ねた頬に唇が落ち、それから唇に それが触れる。


「ん…」


啄むようなキスをされ、その甘さに絆されていく。

疲れた体は、ふわふわと落とされる甘さに、あっさりと陥落する。

ふっと眠りに引き込まれながら感じたのは、俺を甘やかす ロイの唇の甘さだった。


















〜End〜





あとがき

微エロってのは寸止めのことを言うんじゃないかなぁ…と
思い至ってみた今日この頃。
これのどこが微エロじゃーっっ!!って話(笑。
いやいや微エロですよぅ!って言い張りたいんですが…
………ごめんなさい。エロです。ただの…(沈。

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