僕らの愛のカタチ





学生寮の一室。

ネームプレートには、マース・ヒューズ、ロイ・マスタングの文字。

深夜0時。そのドアをノックするのは、隣室の住人


「へーい。どちらさん?」


中から聞こえるのは マースの声。

こんな時間に訪ねてくるのは、この部屋の住人に

何かやらかした記憶がなければ くらいのものだ。


「俺。」


これだけ言えば、声でわかってくれる。


「よう。いらっしゃい、待ってたぜ。」


かちゃりと ドアが開く。ひょい と、顔を出したマースは…


「酒くさっ!」


かなり アルコールの臭いをさせていた。


(飲んでやがったな こいつ…)


「俺じゃなくて教官だったら どーすんのさ。」

「俺らに 疚しいことはねぇ!だから 教官は ここには来ねぇ。」


疚しいのは今じゃねぇかと 口にするのは止めておいて、


「あ、そ。」


は 取り敢えず室内へ足を踏み入れた。


「あれ、ロイ?」


部屋の奥では ロイが自分のベッドに腰掛けて

舐めるように酒を飲んでいた。


(…猫みてぇ。)


「よ、ロイ。」


声をかけると、ゆるりとに視線を向け、


「…か。」


ぽつりと誰に言うでなく呟いた。


「珍しいな。二人とも寮に残ってるなんて。」


いつもなら どちらかはデートだ何だと出かけて

(正確には抜け出して)いるのだ。


(マースがいたから、てっきりロイは外出してるものだと思ったのに…)


「どうしたんだよ?もしかして今日は、俺 必要ねぇ?」


どちらかが不在の時、残ったどちらかの相手をする。

いつの間にか暗黙の了解となった その関係。


主に金曜と土曜の夜、は この部屋を訪ねる。

今日は金曜で(時間的には もう土曜だけれど)

昼間に「来なくていい」と言われた記憶は無い。


「ま、いいから座れや。そして飲め。」

「え、ちょっ…」


マースのベッドに座らされ、グラスを渡される。


「俺の酒が飲めねぇって?」


笑顔で そういう おっさんみたいな台詞は 止めた方がいいと、

は 真剣に思う。


「はー…一杯だけな。」


は 渋々と、渡されたグラスの中身を 少しずつ口に含み嚥下する。

今週の授業は どうだった とか、むかつく教官がどうの とか、

そんな他愛も無い話をしていると、の視界が 唐突に くらりと歪んだ。


「あ…?」

「ん?どした、。」

「んー…何か、くらくらする…」


グラス一杯を ゆっくりと飲んでいただけで酔うほど

自分は酒に弱いつもりなんてない。おかしい と、

は くらくらする頭を 何とか働かせて原因を探ろうとした…が。


「効いてきた みたいだな。」

「え…」


答えは あっさり マースが出した。


「な…に、入れやがった…」

「さぁ。何だと思う?」


にやりと笑ったマースに、ぽん と肩を叩かれ、

それが答えだとが悟るのに 要した時間は数秒にも満たない。

びっ と、その背中を走ったのは、紛れもない快感だった。


「何がしたいんだよ、お前ら…」


にやにや笑っているマースと、

助けるでなく淡々と見守るロイを軽く睨んで。

は 諦めの溜め息を吐いた。








  ※   ※   ※








「ちょっ…本気かよ…っ」


力の入らない身体を ベッドへ引き上げられ、

二人がかりで服を脱がされる。


を背後から足の間に抱きかかえるマース。

ロイは正面から の足を開かせる。


二人の手が触れるたび、電流のように走る快感に、

は 抗う術を持たない。


「本気さ。本気じゃなきゃ、何に見える?」


本気の割には軽い口調で言って、

マースはの胸を探る。


「ん…っ!や…」

「嫌?何故?」


ゆるりと の足を撫で上げながら、

その口角を上げてロイが問う。


「だっ…て、こんな…」


三人でする、なんて。


「俺たちは、ずっと こうしたいと思ってたよ。」

「な…に、それ…」


マースに、後ろから 耳に吹き込むように そう言われ、

ぞくりと 身を震わせたの思考回路は、

次のロイの台詞で、その働きを放棄することを切望した。


「俺は お前が好きだ。…。」

「な…っ」


しかし、の理性が その望みを受諾するはずはなく、


「ちょっ 待てよロイ。『俺たち』だろっ!」


マースの追い討ちをかけるような発言にも、理性くんは めげなかった。


「何…言ってんだよ、お前ら…」


めげはしなかったが、思考回路に真っ当な思考を

要求するだけの力もない。


が状況を飲み込みきれないうちに、

ロイの指は の中を解しにかかっていて、

その指が返る度に、彼の指に添えられたローションが

ぐちゅり と、音を立てる。


「ん…あ…ぅ…」


さらに、自身はロイの口に含まれ、乳首は マースの舌に弄られて、

の理性は 敢え無く崩壊した。


「ひぁ…ぅ…あぁぅっ…んっ」


ただでさえ薬のせいで感じやすくなっているというのに、

相手が一人なら 絶対にあり得ない攻め方をされて、

は 理性どころか 自我すら飛ばしてしまいそうなほどに乱れる。


「あっ…そ…れっ…やぁぅっ…」


自身の先端、とろとろと 蜜を零している窪みを、

ロイの舌に ぐりぐりと押され 擦られて、

後孔に埋め込まれた指で、ぐいぐいと しこった その場所を刺激されては、

は ひとたまりも無かった。


「い…ぁっ…あぁぁぁぁっ」


精を放つ瞬間、先の刺激に加えて、マースに両の乳首を

きつく摘み上げられ、気の遠くなるような絶頂が を襲う。


「あ…ふ…ぅっ」


吐き出した精は、すべて その残滓さえも ロイが吸い取り、

マースの指は 先程きつく摘んでしまった それを

労わるように ゆるゆると撫で回した。


イったばかりの身体に与えられる刺激に 静止の言葉を投げようとして、

しかし くにゃりと 力の抜けてしまった身体同様、

脳も 言葉を紡ぐという その動作を指令するには

快感の余波に侵されすぎていた。


「あ…」


ぼんやりと、けれど確実な快感を得て身を震わせるの背後から

マースの温もりが消え、ぽすりと ベッドに倒された。


(マースは、どこに…?)


が そう思うのと ほぼ同時に、慣らされた後孔に

ロイの熱塊が埋め込まれる。


「ぁう…んっ」


ぬくぬくと 入り込んでくる それを、

慣らされたの そこは易々と受け入れる。


もう 何度もした行為だから。

ロイとも、マースとも、決して初めての行為ではないから。

二人相手に こうされることに戸惑いこそあれ、

の自身は萎えることなど無く、

与えられる快感を あっさりと受け取っている。





ロイの声が の耳元を掠める。


「あ…?」


いつの間にか 閉じてしまっていた目を ゆるりと開けると、

ロイの真剣な目が を 見下ろしていた。


「好きだ。…お前が、好きだ。」


ゆっくり、殊更ゆっくり紡がれる告白の言葉は、

聴覚を通して与えられる 不思議な快感で。

新たな絶頂の予感に、は ふるりと震えた。


と、ずん、と 沈み込むような感覚があって、

は 更に奥に入り込んだロイのそれに、小さく悲鳴を上げた。


「ひ…ぁっ…な、に…?」


の目の前にある ロイの顔が、苦しげに歪められている。

と、思ったら ロイは そのまま の肩口に 顔を埋めてしまった。


「くっ…マースっ!いきなり 入れるな!! 」


その体勢から マースに怒鳴りつける ロイ。

怒鳴り声に、やっと まともな思考を取り戻すことができたは、

ようやく 周りを見渡すことができるようになった。

が しかし、まず見つけてしまった それに、愕然と目を見開いた。


「な…にして…、ちょっ…マース?」


が 目にしたものは。

自分に覆い被さっているロイの、その後に膝立ちになったマースで。

しかも マースの それは、ロイの中に ずぷりと 埋め込まれていた。


「ロイが一人で告白大会始めちまうのが 悪いんだろ?」


だから おしおき、なんて にやりと笑って言ってのけるマース。

しかし、ロイは それに抗う様子を見せず 苦しげに息を吐くばかりで、

は ちょっと信じがたい光景を目の当たりにして というか、

その当事者にされて、困惑を隠せない。


。俺も、お前が好きなんだ。」


状況に そぐわないほど 真剣な マースの声。


「そんで、ロイのことも 少なからず好きなわけよ。」


だから この状況。と、結んでしまえるマースは

実は とってもすごい奴なのかもしれない。


「俺は、だけで 十分なんだがな…。」


浅く息を吐きながら、ロイが ぼそぼそと言う。


「そんな つれねぇこと言うなよ。」


その言葉に、マースは 軽く笑って 腰を突き上げた。


「…っう…」

「あっっ」


ロイを襲う衝撃は、当然 繋がったままのにも伝わるわけで、

余裕の笑みを浮かべながら 二人を見下ろすマースと、

苦しげに歪められたロイの顔とを 倒錯的な気分で見上げながら、

は、この状況では もう何を考えても無駄だろうと、

与えられる快楽に 身を任せた。





果てたのは ロイが最初だった。

前後からの 壮絶とも言える刺激に、けれども耐えることのできた彼は

ものすごい 精神力の持ち主と言えよう。

そこから連鎖的に が果て、マースが果てた。


そのまま、マースが うっかり脱力してしまい、が ぐぇっと 呻いた。








  ※   ※   ※








二人の話によると、元々二人とも のことが好きだったらしい。

しかし、さすがに最初から「三人で」なんて思うことはなく、

二人で譲歩した結果が 週末の外出。

どちらか一方が出かけ、一方がと 過ごす。


は その真意を知ることなく、今まで「暇つぶしのセックス」という

名目で この部屋を 訪れていた。


「何だそりゃ…」


はー、と 溜め息を吐き、は 二人を交互に見た。


「だからよ、俺は も ロイも 好きなの。」


あっさりと マースが「結論付け!」というように言い放つ。

は、もう一度 大きく息を吐いた。


諦めた、と言おうか。

如何せん相手は この二人なのだ。

そしても、二人のことが 嫌いではない、

というより 好きなのだから仕方が無い。


「わかったよ。…俺も、ロイとマースが 好きだ。」


そう口にした途端、は ロイに抱きすくめられていた。


「あっ!ずりぃぞ ロイ!! 」


言いながら マースも ほっとしたように笑っている。

どうやら二人は 嫌われる覚悟で こんなことを やらかしたらしい。


「じゃ、またしよーな、三人で。」


ぽん、と軽く、また遊ぼうな くらいの口調でマースが言った途端

ロイが ものすごい勢いで マースを振り返った。


「寝言は寝て言え!」


俺が どれだけ キツかったと思ってるんだ!と、ロイは かなり必死だ。


「ふむ…。じゃあ 今度は が 真ん中で…」

「えっ 俺!?や、無理!! 」


前後から なんて、耐えられるはずがない、と

は 首を ぶんぶん横に振る。


「そーだな。は あんまり堪え性ないしな。」


やっぱ 真ん中はロイだよな!なんて、笑いながら言ったマースに、

ロイと マースのベッドから、それぞれ 枕が飛んできた。


ぼすぼすっと 連続して当たったそれが ずり落ちて

マースが そこに見たものは、枕を投げた体勢のまま

顔を真っ赤にして ふぅふぅと息を吐く、ロイとの姿だった。














〜End〜





あとがき

5ヶ月くらい温めてたネタを やっと消化できました。
ふぅ。すっきり。(笑。
折角 裏なんだから、もっと言い回しを露骨にしても
良かったのかな、なんて。
あー…エロ重視っていーなぁ…(悦。

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