ニューオプティン発 特急〇四八四〇便が乗っ取られた。

そこに ハクロ将軍が乗っているらしい。

だから 東方指令部は、今 慌しくなっている。

別に それは、起こってしまったことだから 仕方がない。


仕方がないんだが……

何も こんな時間に 起きるこたぁないじゃないか。






03.三時のおやつ





「せっかく 自腹切って買った 高級紅茶を淹れたのに!」

「まぁ、落ち着きたまえよ。中佐」


仕事中の口調で ロイが俺を諭すが、


「せっかく 自腹切って 有名菓子店のケーキを買ってきたのに!」

「後で 食べればいいだろう?」

「ケーキは 時間が経つと 味が落ちるんだよっ!」


午後のティータイムを邪魔された 俺の怒りは、そう簡単には収まらない。

許すまじ「青の団」!!


「声明は?」


ひとまず 俺を放っておくことにしたらしいロイが ホークアイ中尉と話し始める。


「気合入ったのがきてますよ。読みますか?」

「いや、いい。どうせ 軍部の悪口に決まっている。」

「ごもっとも。」

「ホークアイ中尉、それ、見せてもらえますか。」


そんなに気合が入ってるなんて、一応見てみたくなるじゃないか。


「はい、どうぞ。」

「ありがとう。」


あー…ほんとに悪口ばっかりだ。

しかし…文が稚拙すぎやしないか…?

気合が入っていると言うよりは 勢いにまかせた感じだぞ…。

こんな…こんな 奴らのために……俺のティータイムは……

もう 泣くに泣けない。


「─で、本当に 将軍閣下は 乗っているのか?」

「今 確認中ですが おそらく。」

「困ったな、夕方からデートの約束があったのに」


は?デート?


「…誰と?」


やばい、つい口に出してしまった。

俺は 心の中で思うってことが 苦手なのか?


「誰と…って、君とだよ、

「は?」


何だそりゃ。


「食事に行く 約束をしたろう?」

「あ。」


………忘れてた。


「まぁまぁ お二人さん、たまには 俺達と残業デートしましょうやー」

「あーうー…ケーキ食ってて いいですか。」

「諦めて下さい、中佐。」


ちっ だめか。ホークアイ中尉 冷たいな…。


「ここは ひとつ 将軍閣下には尊い犠牲になっていただいて、さっさと 事件を片付ける方向で…。」


あぁ、それ いいな。


「バカ言わないで下さいよ 大佐。乗客名簿上がりました。」


いいと思ったのに…。


「あー…本当に乗ってますね、ハクロのおっさん」


ハボック少尉の横から書類を覗き込む。


「うわー まじだ…。子どもが二人か…」


意外に いいお父さんしてんだな、あのおっさん…。

俺は 大っキライだけどね。


「まったく…東部の情勢が不安定なのは知ってるだろうに。こんな時にバカンスとは…」


ホントに まったくな。…っと、


「ロイ?何か見つけたのか?」

「ああ 諸君、今日は思ったより早く帰れそうだ。」


…どういうことだ?


「鋼の錬金術師が乗っている。」


ああ、なるほど。巷で噂の エルリック兄弟ね。


「取り敢えず 駅へ向かう。ホークアイ中尉、ハボック少尉、一緒に来てくれ。」


よし、これで ゆっくり お茶が飲め…


中佐、君もだよ。」


ないのか。


「まじですか。」


「早く来なさい、置いていくよ」

「いっそ 置いてって下さいー」

「だめだ。」


だめか。








  ※   ※   ※








「はー…平和だねぇ…」


駅について 俺の第一声。


「どこが平和なんスか、中佐…。」

「だーって、ここにいる人たち みーんな 普通に生活してるんだぜ?」


慌てているのは 軍人と駅員ぐらいだ。


「言われてみれば…。」


中佐、ハボック少尉、ぼーっとしないで下さい。」


ホークアイ中尉の声に前を見れば、

ロイと中尉は もう随分と先にいる。


「おっと、急ぎましょう 中佐。」

「わ、置いていくな ハボック少尉!」


ばたばたと 走ってロイのもとへ。



「そういえば…鋼って どんな奴なんだ?」


名前だけは 噂で聞いているが、実際に会ったことはない。


「あぁ、は 初めて会うのか。……小さいぞ。」

「は?」

「鋼は。」

「小さい?」

「そう。だが それを本人の前で言うと 手がつけられなくなる。」

「へぇ…」


そりゃぁ 小さいってのはコンプレックスになるだろうが…

そんなに小さいのか?


「大佐ぁ、もうすぐ 列車が着くそうっスよ」


さて、さっさと終わらせて帰ろうか。















「や、鋼の。」


あ。ほんとに小さい。

っと、口に出しちゃいけないんだよな。


「くぁ〜〜〜 大佐の管轄なら 放っときゃよかった!!」

「相変わらず つれないねぇ」


十中八九 ロイのせいだと思う。


「…っと、まだ元に戻れてはいないんだね」


ロイが見た先は…オートメイルの右手…。へぇ、だから「鋼」か。


「文献とか 調べてるんだけど なかなかね…」


どうでもいいけど…弟は随分と でかいなぁ…。


「って、大佐、コレ 誰?」


あ、俺?じろじろ見てたからな、不審に思われたか?


中佐、国家資格はないが、一応 錬金術師だ、よろしくな、エドワード・エルリック。」


笑って手を差し出せば、


「あんた…」


エドワードの様子がおかしい。俺 何かしたか?


「いーやつだな!!」


がしっ と、手をつかまれる。…何だ?

とか思っているうちに、エドワードは ロイとの話に戻っている。


「大将は 初対面の人間に 間違われずに エドワードだって認識されることが少ないらしいんスよ。」


こそっと ハボック少尉が教えてくれた。


「あー…なるほど。」


納得。




「うわぁっ!!」

「貴様…ぐぁっ!!」


………まったく 元気な おっさんだな…


「待て、。」


片付けようと 踏み出したら ロイに止められた。


「大佐、お下がりくだ…」

「いや、これでいい。」


ホークアイ中尉が 銃を構えるのも遮って、右手を構える。

さまになるから 腹立つんだよ。


「うぉぉぉぉぉぉ!!!」


パキン と音がして、小さな爆発が起きた。


………俺とやった時は 加減してやがったな…。


「手加減しておいた。まだ逆らうというなら、次はケシ炭にするが?」


あー…俺って甘やかされてんのかも…。


「ど畜生め…てめぇ 何者だ!!」

「ロイ・マスタング、地位は大佐だ。そして もうひとつ」


ロイ…何でソイツ相手に そんな大それた 自己紹介をする?


「『焔の錬金術師』だ、覚えておきたまえ」


おいおい…。





「ところで、中佐」


ロイを眺めていたら、エドワードが話しかけてきた。


「ん?で いーぞ、エドワード」

「お、おう。俺もエドでいい」


……どうしたんだ こいつ…?


「あの…さ、今夜 一緒に晩メシでも…どうかな?」


はい?


「え…エド?」


「や、だからさ、初めて会ったし…それで、その…」


これは…もしかして…


「こら、鋼の!に手を出すんじゃない!!」

「あ。ロイ…」

「何だよ大佐!邪魔すんなよな!!」


ぎゃぁぎゃぁ と、言い争いが始まる。


あー…俺って どうすればいい…?


「なぁ…取り敢えず 帰ろう?」


俺は 早く帰って お茶にしたい。


「あー…もう…」


まだ ぎゃぁぎゃぁ やってる二人の腕をつかんで、


「っ…?!」

「うわっ ちょっ !!」


ずるずると 引きずって 車に戻った。



がんばったエドにも うまい お茶を 淹れてやろうかね。







〜End〜




あとがき

3本目!ここまで お題の順番通りきてますね。
これからは どうなのでしょう。(計画性がない…)
取り敢えず、エドが横恋慕な感じで!

今回 書き上がってからミス発覚。
この後、エドがタッカー邸で時計に気づいた時点で午後5時なんですね…。
移動時間なんかが ちょーっと 苦しいかなっ なーんて…あはは。


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「久しぶりに会ったんだから お茶の一杯くらい 付き合いたまえよ。」

「…野郎と茶ぁ飲んで 何が楽しいんだよ…」

「え…だめか?せっかく いい葉っぱ 淹れたのに…」

!!」

「お茶くらい 付き合っていくだろう?」

「……おぅ。」