「おーい、エド、アルーっ 迎えに来たぞーっ」
丁度 庭でニーナと遊んでいた2人に声をかける。
エドたちが タッカー邸に通い始めて数日。
最初のうちはハボックがやっていた エドたちの お迎えが、最近ではすっかり俺の役目になった。
と、いうのは、
「あ、お兄ちゃん!!」
一度ハボックについてきて お邪魔して以来、ニーナになつかれてしまい
俺が来ないと ニーナが寂しそうな顔をするのだという ハボックの発言があったからで、
「!!」
決してエドに抱きつかれるためではない。
「ちょっ 待っ!!エド!ニーナっ!!」
二人一緒に抱きついてきて、さらにエドを追って アレキサンダーまで飛びついてきたもんだから
俺は 庭の芝生に 背中からダイブすることになった。
「こらっ 重いっ!!」
「あーもう、兄さん!何やってるのさ!」
べりっ と、アルがエドとアレキサンダーを俺から引き剥がす。
「うわっ!アル!何すんだよっ」
じたばたと暴れるエド。
「大丈夫ですか?さん」
「あぁ、さんきゅ。」
ニーナを抱えて起き上がる。
「お兄ちゃん、今日は遊べる?」
「遊べるよ。」
笑って答えれば、ニーナの顔に 満面の笑み。
あー…やっぱり 子どもは かわいいなぁ…。
今日の仕事は終わらせて来たから、あとはエドたちを送って帰るだけ。
「エド、アル、今日この後用事あるか?」
アルから解放されたと思ったら 今度はアレキサンダーに潰されているエドに問えば、
「いや、ねぇよ」
と、返ってくる。
「じゃ、決まりだな」
「へ?」
「思いっきり 遊ぶぞ ニーナ!アレキサンダー、おいで!!」
わふっ と、一つ吠えて、アレキサンダーがエドの上からこっちへ駆け寄ってくる。
頭を撫でてやると 擦り寄ってくるんだよな、コイツ。
さて、やるか。
「よっし エド!逃げろーっ!!」
「はぁっ?!」
「行っけぇ アレキサンダーっ!」
俺の号令で アレキサンダーが走り出す。もちろんエドに向かってな。
「どぅあーっ!!」
おー 逃げとる 逃げとる。元気だねー。
って………
「こっち来んのか!!」
エドが こっちに向かって方向転換しやがった。
「当たり前だコラ!───っっ」
「逃げるぞ ニーナっ!」
ニーナを抱えたまま走る。アルの方へ。
「えっ ちょっと!さんっ?!」
「アルー、捕まったら司令室の掃除な!」
「何ですかそれ─────っっ」
盛大な鬼ごっこが始まった。
って、もしかして ニーナ抱えてる俺が一番不利?!
「まて こら ───っ」
アレキサンダーから 逃げながら 叫ぶエド。
「あははーっ お兄ちゃん速ーいっ」
無邪気に喜ぶニーナ。
「アルー、観念しとけーっ」
「嫌ですーっっ」
がちゃがちゃと 音を立てて走る アル。
たまには、こんな運動も いいなぁ…。
※ ※ ※
「中佐」
しばらく そうして遊んでいると、家の中からタッカーさんが出てきた。
「はい?」
結構走ったから、さすがに呼吸が乱れるな。
「マスタング大佐から お電話ですよ。」
ロイから?
「あ、はい。ありがとうございます。 ニーナ、ちょっと待っててな。」
抱き上げていたニーナを降ろし、呼吸をととのえながら 家の中に向かう。
こんなとこにまで 電話してくるなんて…何かあったのか?
「は?給料明細ぃ?」
『ああ。今日渡しそびれてね』
そういえば 給料日だったな…。
「取りに来いっての?」
『いらないのなら かまわないよ』
「いるよ、いります。行けばいいんでしょ。」
『どうせだから、その後の予定は空けておいで。』
「……何…考えてるんだ?ロイ…。」
わざと渡さなかったわけじゃ ないよな…。
『食事に誘おうとしただけだが?…何か?』
笑ってやがる!
「なっ 何もねぇよっ!じゃぁなっ!!」
受話器を乱暴に戻そうとして、他人の家だったことを思い出した。
「タッカーさん、電話 お借りしてしまって すみません。ありがとうございました。」
「いえ。ところで、今日はもう お帰りになられるんですか?」
「ええ、所用ができてしまいまして。では、失礼します。」
外に出れば、ニーナたちは まだ遊んでいて、
「お兄ちゃん!お話終わった?」
ニーナが俺に気づいて 駆け寄ってきた。
「ニーナ。お兄ちゃん、用事ができて戻らなくちゃならないんだ。」
「そうなんだ…」
あぁっ そんなにしゅんとしないでくれっ!
「戻るって、司令部に?」
アレキサンダーの下敷きにされながら エドが訊いてくる。
「ああ。野暮用だ。」
「ふーん」
「ニーナ、また 明日来るから。」
「明日も遊べる…?」
「がんばって、お仕事終わらせてくるよ。」
「約束ねっ」
にっこり笑って小指を差し出すニーナ。
「ああ。約束。」
ニーナの小さな小指に 自分の小指を絡める。
「じゃぁ、また明日」
「うん。ばいばい、お兄ちゃん。」
「エド!アル!門の外で待ってるぞ!」
ありゃ、エドの奴、まだアレキサンダーに下敷きにされてら。
エドとアルは タッカーさんに挨拶するため、ニーナを連れて 一旦家の中に入った。
「じゃ、明日もよろしく お願いします。」
「ばいばい、お兄ちゃん!」
「おう!また明日な。」
「ばいばい ニーナ、また明日。」
「うん、また明日ねーっ」
※ ※ ※
エドとアルをホテルへ送り届けて、司令部へ向かう。
「せーっかく 早く仕事終わらせたのになーっ」
ロイのせいで 結局あまり遊んでやれなかった…。
「あ…」
通り過ぎた おもちゃ屋のディスプレイに くまのぬいぐるみ。
「明日 ニーナに買ってってやろーかな。」
丁度給料も入ることだしな。
よし、決まり。
「あれ?中佐、帰ったんじゃ…」
司令部に着くと、丁度帰りがけらしいハボックと出会った。
「ロイが 給料明細 取りに来いっつーから 戻って来た。」
「あぁ、そういえば 大佐がにやけてましたっけ…」
「は?」
にやけ…?
「や、何でもないっス。じゃあ、また明日」
「おう、気ぃつけてな。」
にやけてた…ってやっぱりわざと か…?
「失礼します」
ノックをしてドアを開ければ
「やぁ、。待ってたよ。」
笑顔のロイが 執務用の椅子に座っている。
「あれ?ホークアイ中尉は?」
「帰ったよ。」
「ふーん…」
まぁ、確かに いい時間ではあるが。
「今 ここには、私との二人きりだ。」
「…だから?」
「おや、つれないね」
あー…ロイの考えてることが 手に取るようにわかる。
「司令室には まだ何人か残ってるだろーが」
「ここには来ないよ。」
言いながら 立ち上がり 近づいてくる。
「へぇ?」
「だから……」
腰を捕らえられ、唇が触れる…寸前。
「俺は 明細もらって 帰るつもりだったんだけど?」
ロイの目を見て言い放つ。
「食事に誘ったろう?」
確かに 食事には誘われたが、
「これと どんな関係が?」
「あるさ。腹を空かせるためには 適度な運動を、ってね。」
と、言いながら ズボン越しに 俺自身に触れるロイの手。
「っ…こら!ロイ!!」
「静かにしないと 誰か来るかもしれないよ?」
……コノヤロウ。
「じゃ、こんなとこで すんな。」
「諦めなさい。」
ぐっ と、握りこまれ、
「っあ………バカ。」
力が抜けた。
※ ※ ※
「あーもー 最悪…。」
1R終わった時点で 俺はもう くたくたで、
「大丈夫か?」
「少しは加減してくれ」
ソファーに座った状態で 身支度を整える。
「いつもよりは、かなり 手加減したと思うが?」
「あのなぁ…俺はベッド以外での経験がほとんどないんだよ!」
酔った勢いで 玄関でやらかした アレくらいだ。
「ほう?…なら、徐々に慣らしていくとしようか。」
「何でだよ!!」
って…何で圧し掛かってくるんだ!
「手始めに もう1R…」
「だめ!」
「なぜ?」
なぜって…
「俺は ハラ減ってんの!さっさと メシ食いたいの!!」
「ふむ…仕方ないな。」
仕方なくない!
「じゃぁ、今夜は泊まりにおいで。」
「は?」
どっから つながった「じゃぁ」なんだ?
「家の中でも ベッド以外の場所は たくさんあるからね。」
「…っっ」
何てこと言うんだ この男は…。
「嫌だ…と言ったら?」
「コレは 預かってあるからね。」
ぐぁ─────っ 俺の給料明細ーッ!!
俺…明日 ちゃんと 仕事できるんだろうか…。
いや!出来なかったら ロイに押し付けてでもニーナに会いに行ってやる!!
くま抱えてなっ!
〜End〜
あとがき
お待たせしました第5弾。
前半は ほのぼのしてるのに…後半が微エロ…。
うちの大佐って、すぐそっちに持っていくよな…(書いてるのは俺だけど)
ところでこれってシリーズ?連載?
…一応 連載ってことで いいんでしょうか…?
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