消せない罪








ぱたりと後手にドアを閉め、ベッドに座って本を読むに近づく。


「ああ、エド…どうしたの?」


俺に気付いて顔を上げたの表情は、

見えているはずなのに、どこか ぼんやりと歪んでいる。


ああ、そうか。これは夢だ。

…また、あの夢だ…。



やっと慣れ始めた機械鎧。その重さにも 随分 馴染んできた。

あと半月もすれば完全に自分のものになる。

一ヶ月後には ここを、リゼンブールを離れることが可能だろう。

アルと そんな話をした翌日。の元を訪れた日の夢。


学校の友達だったを、俺は ずっと好きだった。

それは アルにも秘密で、本当に俺だけの想いで。

でも、それだけで十分だった…はずなのに。


「エド?」


表情は はっきり覚えていない。

ただ、少し怯えたような それだったことは、何となく記憶している。


「や、何?エド?!エドってば!! 」


無言でを押し倒す。

本当は 何か言ったかもしれないけど覚えてない。


「エド!やめっ…やめてっっ!」


のズボンを下着ごと引き下ろして、子どもの それを握り込む。

知識はあった。俺自身は精通していたし、色んな本を読んだから。

一つ年下のの それは、小さくて、握り心地が良くて、

俺は それに夢中になった。


「や…やぁっ!エドっ!エドっ…やめてぇっ」


ぱくりと 口にくわえて、めちゃくちゃに 舐めまわした。

多分、熱を持つことを知らなかったろう のそれは、俺の口の中で

だんだん熱くなっていって、俺が口を離すと ぷるりと勃ちあがっていた。


「ふ…ぅぇ…っく…な…に、これぇ…」


今まで見たことの無い 自分の それの反応に

は涙を零しながら怯える。

その表情に 俺は、の後孔に伸ばそうとした指を引っ込めた。

これ以上 泣かせたら壊れてしまう、と 何故か思ったからだった。


「ふぁっ!?」


俺は、熱を持った自分の自身を ズボンから引っ張り出し、

のそれに重ねた。

ぐりっ と 擦れた感触に、俺は背中を震わせ、

は 戸惑ったような声を上げた。


「ああっ…ん!エドっ…やだぁっ…」


ぐりぐりと押し付けると、弾かれて、擦れて、ぐちゃぐちゃになっていく。


、好きだ。」


身体を逃がそうと、僅かに暴れるの耳元に囁くと、

は ぴたりと動きを止めた。

驚いたように大きく見開かれた目は 涙に濡れて 俺を見つめている。


「す…き?」

「うん。好き。が 好き…」


ぴたりと動きを止めて、訴えるように囁くと

は 揺れる瞳で見上げてくる。

その瞳の濡れた色は、決して忘れ得ないほど強い印象を 俺に与えた。


「すきだと、する?」

「え?」

「すきだと、これ…するの?」


幼い声。自分のものより少しだけ高いそれが、耳元を擽って、

でも、その問いが 何を意味するのかは分からなくて、ただ頷いた。


「じゃ…いい。」


ぽつりと小さく零れた声。の、小さな 小さな声。


「して…。俺も、エドが…すき…」


心臓が 跳ね上がるように、どくどくと音を立てる。

顔を赤くして視線を彷徨わせる

言われた言葉が 咄嗟には信じられなくて、


「ほんとに…?」


確かめる声は、自分でも驚くほど 幼く響いた。


「ん…。エド、好き…」


言って、きゅっと俺の首に抱きついてきたが、

接したまま、ただ 熱だけを伝えていた腰を ゆるりと促すように動かした。


…」


俺は、もう 堪えきれなくて、がむしゃらに自身をの それに

押しつけ、擦りつけた。


「あ…あぁっ…んやぁ」


が 高い声を上げて、その腰が びくびくと震えた。


「ひぁっ…あ?っ…やぁぁぁぁっ!」


ぴっ と、の熱が弾け、つられるように俺も 自身を解放した。








  ※   ※   ※








「あー…」


目覚めてみれば、そこは 久しぶりに帰って来たリゼンブールの

ピナコばっちゃんの家。

ぶっ壊れた機械鎧を直してもらうために訪れた故郷の陽は

すっかり落ちている。部屋には他に 誰もいなかった。


きれいに直った機械鎧。すっかり馴染んだ身体の一部。

この身体の理由を、には 話した。あの後 すぐに。

旅立ちを決めたことも告げて。


出立の前日、俺はを抱いた。は 抗わなかった。

ただ うわ言のように「好き」と それだけを

甘い喘ぎの間に声にして、俺を受け入れた。


その時、俺は…俺は 自分の罪を知ったんだ。


好きで 好きで 好きで どうしようもなくて、離れる前に手に入れたくて、

その衝動に身を任せた。

でも、それは やってはならない ことだったのかもしれなくて…。


「痛…っ」


神経を繋げたばかりの機械鎧の右肩が、ツキリと痛んだ。


「…何、やってんだろ 俺…。」


こっちに帰ってきてから、には まだ会いに行っていない。

明日の夕方には ここを発つのに…。


会いたくないわけじゃない。

本当は、会いたくて 会いたくてしょうがない。でも…。


許してくれる

旅立つことを告げた時も、ただ笑って、「行ってらっしゃい」と言ってくれた。

「待ってるから」と 言ってくれた。

「早く帰ってきて」も「さみしい」も言わずに、送り出してくれた。


「今 会ったら、甘えちまいそうなんだよな…」


独り語ちた言葉に滲んだ色に、はっとなった。

…自分に 嘘をつくのは、どうやら無理だ。


会いたい。今すぐに。

会わずに行こうなんて、そんなの 後悔するだけに 決まっているから。


勢いをつけて起き上がって、上着を掴んで外に出た。

急く心のまま 駆け抜けた。

に会いたい 気持ちに任せて。

そう、今は もう、それだけでいい。








  ※   ※   ※








幼い頃に両親を亡くしたは、ここで、ばーさんと暮らしていた。

でも、その ばーさんも、俺たちが旅立つ ちょっと前に亡くなった。


ここは良い村だから、は、周りの大人たちに助けられながら

一人で生きることを選んだ。

この村を離れて、施設に入るのは嫌だと、そう言って。



の家まで走って走って、辿り着いた家のドアを、

不躾と知りながら、がんがんと 叩く。


もう眠ってしまっているだろうか。

迷惑がられたら…どうしよう。

今更 そんな思いが巡る。


「はーい。誰…?」


少し眠そうな、それでも涼やかに通る声。


…俺。エド。開けて…?」


数秒 間があって、ガチャリと開いたドアから、

勢いよく が飛び出してきた。


「エド!! 」

「わっ…!」


どん、と ぶつかるように抱きついてきたは、

以前よりも 背が伸びていた。

それでも、俺の腕に収まるくらいで。


…相変わらず、牛乳嫌いか…?」


思わず問えば、


「自分だって嫌いなくせに!」


ちょっとは 伸びたけど、身長差は変わってない、と 噛み付いてくる。


「そーだな。」


顔を見合わせて笑う。

ああ、やっぱり…来て良かった。


「おかえり、エド。」

「ん。ただいま。」


ぎゅっと抱き寄せて 唇を合わせる。

しっとりとしたキスは 少し幼さが抜けて、唇に心地良い。


「中…入ろ。」


唇を離し の声に促されて、家の中に入ると そこは、

以前とは少し 雰囲気が変わっていた。


「今、お茶 淹れるね。」


そう言ってキッチンへ向かいかける

後から抱き締める形で引き止める。


「いいよ、。いいから、側にいろよ。」


甘えるように肩口に額を埋めて囁けば、は ふっと苦笑したようだった。


「何、甘えてるのさ。」


柔らかい声が、冷たい言葉を紡ぐ。


「甘えたら、だめか?」

「だめじゃ ないけど…」

「けど?」


言い淀んだに 先を促せば、


「会わずに、行くつもりなのかと 思ってたから。」

「え…。」


そんな言葉が返ってきて ドキリとする。


「ウィンリィに、帰ってきてるって聞いて。でも、会いに来ないから。」


の声は とても穏やかで やわらかいままだけれど、

そこに少しの さみしさが滲んだ気がして、


「全部終わるまで、会わないつもりなのかなって…」

…」


俺は 抱き締める腕に、ぎゅっと 力を込めた。


「ごめん、。俺は…」

「いーよ。どうせ 迷ってたんでしょ?」


ちょっと からかっただけ、とは 肩の上にある

俺の頭を ぽすぽすと撫でた。


「エドは、思いつめてから突発的に行動するから。」

「あー…」


さくっと突かれて、反論が見つからない。


「で?」

「え?」

「また行くんでしょ?」

「あ、ああ…うん。」

「いつ?」

「明日。夕方には…。」

「そう。」


俺に抱き締められたまま 俯いたは、ふっと小さく息を吐くと

そっと 抱き締めている俺の腕を外させた。


?」

「エド、しよ?」

「え…」


くるりと 身体を反転させて、今度は向き合う形で俺の腕に収まる

は、ふわふわと笑んでいる。

その表情からは、幼さが消え、艶めいた色を映している。


…」

「嫌?」

「嫌…じゃないけど」

「したくない?」

「したくな…くもないけど」


しばらく会わないうちに 随分と大人びた。だから戸惑っている、と

そう告げれば、は ふっと苦笑した。


「幼くなきゃ だめ?」

「んなわけないだろ。」


再び の身体を抱き締めて、シャツの裾から手を忍ばせる。


だったら、おじさんでもいーよ。」


背筋に沿って指を滑らせながら言ったら、

それはちょっと、と 顔を顰められた。








  ※   ※   ※








「あ…んっ!エド…っっ」


久しぶりだった上に、お互い それなりに成長してしまったせいで、

なかなか コトは 上手く進まなかった。

オイルを絡めて、のソコが どろどろになるまで慣らして、

やっと繋がった時には が数度放った白濁と オイルとで

二人の間は ベトベトになっていた。


「苦しい?」

「ん…平気。」


全部 収めきって問えば、それまで目を閉じていたが、

ふっと その瞼を上げた。


「っ…」


目が合って、つきりと 胸が痛む。


「ん、エ…ド?」


どうかしたのか と、不安げに問うに 大丈夫だと笑って見せて。

を 熱に溶かすように 追い上げていく。


の瞳の奥に輝く 鮮やかな色。

初めて出会ったときに魅かれた その色は、

今もの中に 強く光っていて。


俺が 俺の手で 汚して手に入れた

禁忌を犯した俺が、求めていいものでは なかったのだ。

強い光に焦がれて、手を伸ばした。

それが…俺の 罪。


いくつもの罪に濡れた俺を、は 無条件に許してくれている。

甘えてはならない。すべて、取り戻すまで。


…」


繋いだ身体を 快楽に溶け込ませながら


「きっと…取り戻して、戻ってくる。」


ゆるやかな 波に乗せるように 告げる。


「きっと を、この両腕で 守れるようになるから」


これは、俺の 誓い。


「だから…待ってて。」


身勝手な俺を、許してくれる君への…。



もう迷わない。

消えない痛みも、俺の罪も、全部 全部、抱えていく。

抱えられるほど 強くなる。強くなって帰って来る。

君を、抱き締める為に。


「いつか、二人で、この村で…一緒に暮らそう。」


快楽の波に攫われながら、小さく それでも確かに頷いてくれた

が 愛しくて、抱き寄せる腕に力を込める。


「エド、エド…っ」


きゅっと の身体に力が入った。

絶頂に押し上げられたは、熱を解放すると同時に

意識も飛ばしてしまったらしい。

俺も ほぼ同時に達して、くにゃりと 力の抜けた

全力疾走直後のような 荒い息を吐きながら 抱き寄せる。


…愛してる。」


の温もりを 腕に抱き締めながら、

ゆったりと 押し寄せてきた心地良い眠気に 身を任せた。



再び 旅立つ 時間まで、あと少し、もう少しだけ、君の温もりを…。















〜End〜





あとがき

柊、初ショタに挑戦(笑。
て ことで第五弾『消せない罪』いかがでしたでしょうか。
もう少しシリアス色 入れたかったんですが、
長くなりそうだったので、ただの甘話に路線変更(笑。
何だかエドばっかりエロだな この企画、って突っ込みは
無しの方向で(苦笑。

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