「!」
ばたばたと廊下を走る音がする。
この家で、こんな音を聞くことになるなんて、ほんの数ヶ月前まで
想像もしていなかった。
十数年前、軍従していた父親が殉職し、元々病弱だった母親は、
配偶者を失くしたショックとストレスから寝込んでしまった。
その母親も2年前に亡くなり、兄弟もいなかったは、
広い家に1人残された。
維持費ばかりかかる大きな家で、けれど売り払ってしまうには
思い出が惜しく、1人細々と生活してきた。
そんなある日、庭の手入れをしようと外に出たは、奥まった所にある
低木の陰に蹲る少年を見つけた。それが、転機。
ラースと名乗ったその少年に、危険はないと判断したのには、
もしかしたら寂しさからの縋りたい気持ちがあったかもしれないと思う。
警戒心は、あまり強くは働かず、はすんなりと彼を受け入れていた。
その日から、ラースはよくこの家を訪ねてくるようになった。
「!」
「はいはい。ここにいるよ」
焦れたように呼ばれて声を返せば、足音が速度を上げて、数秒後には
勢い良く部屋のドアが開かれる。
「いらっしゃい」
ドアを振り返って笑顔を向ければ、満面の笑みを浮かべたラースが
思い切り良く飛びついてくる。
「わっ!と……」
自分より少しだけ背の低い彼を、けれど何とかやっと受け止めた。
「!」
がばっと顔を上げたラースが、何かを訴えるようにの名前を呼ぶ。
「な、何?どうしたの、ラース」
「これ!これ、何!?」
興奮した顔で、ずいっと古びた本の見開きを示すラースの目は、
何かの期待に輝いている。
「え、何って……」
それはどうやら料理の本らしく、示されたページには、パフェの写真が
カラーで掲載されていた。
「パフェ……だねぇ」
「これって食べ物なんだろ?」
「う、うん。でも、なんでまた……」
一体どこからこんな本を持ってきたのか。
そして、それをここに持ってくる意図は……。
「あのね、これエンヴィーが……」
「ラース!1人で先に行くなって言っただろう!?」
言いかけたラースを遮って、ばたんと開かれたドアから入ってきたのは。
「エンヴィー!」
幾度目からか、たまにラースについてくるようになった、
青年というか少年というか。
エンヴィーと名乗った彼は、甘えたなラースの保護者的な態度で
ここを訪れるが、その実、彼の方もに甘えに来ているような節がある。
その彼の両手には、大きな紙袋が1つ抱えられていた。
「何?どうしたの?」
その大荷物にが目を瞬くのに、エンヴィーはつかつかとに
歩み寄ると、その荷物をどさりと手渡してきた。
「え、ちょっ……!」
「これ」
「へ?」
一体なんだとが言う前に、エンヴィーが、ずびっとラースを指差した。
正確には、ラースが手に持っている本を差していた。
「作って」
「はぁ!?」
「それ材料」
「って……何?パフェ?」
「そう。チョコのやつ」
ラースが嬉しそうに見ている本には様々な菓子のレシピが載っているらしい。
その中で、きっちりと開き跡がついてしまっているのがチョコレートパフェの
ページだった。
「何でまた……」
「ラースが食いたいって言うから」
「エンヴィーだって食べたいって言ったじゃないか!」
「ラースがコレ食べたそうに見てたから!」
「あー、はいはい。わかったわかった」
何だからって、そんなものを見て、そして材料までもってここへ来るのか。
彼らは普段一体どんな生活をしているのだと甚だ疑問ではあれど、
それを問うことは何故か躊躇われて、ただ諾々と、その我侭を聞いてしまう。
「作ったげるから騒がない」
大人しく座っていろと言い置いて、紙袋を抱えたは、
ラースから本を受け取ると、すたすたとキッチンへ向かった。
※ ※ ※
「はい、できたよ」
数十分後、テーブルに並んだのは、3つのチョコレートパフェ。
紙袋の中には材料だけではなく、3つのグラスとパフェ用の
スプーンまで入っていた。
「へぇ、実物ってこうなってるんだ」
「わーい!いただきます!!」
「はい、どうぞ」
それぞれの反応を見せたエンヴィーとラースに、苦笑交じりに勧めれば、
初めて口にするものへの期待と不安があるのだろう2人は、
うきうきとした目で、けれど恐る恐るスプーンを口に運んだ。
「ん……んまーい!」
一口食べて、ラースが嬉しそうに声を上げた。
エンヴィーも、何も言わなかったが満更でもないような顔をしている。
「そう?よかった」
2人の反応に、くつりと笑って、もスプーンを取った。
※ ※ ※
「さて、と」
「ん?なに、どうしたの?」
グラスを空にしたが立ち上がると、ゆっくりと味わいながら
パフェを食べていたラースが、どうかしたのかと視線を向けてくる。
「後片付けしなくちゃ。作ってそのままなんだ」
ゆっくり食べてて良いから、と言うと、ラースがスプーンを銜えたまま
こくこくと頷く。
エンヴィーを見れば、もう殆どグラスは空に近かった。
「食べ終わったら、器持ってきてね」
「はーい」
良い子の返事をしたラースに笑んで、はキッチンへと入った。
「さて、どうしようかな」
ひとりごちるの前には調理台。その上にはボウルが1つ置いてある。
グラスに対しての量が多かったせいで、ペースト状のチョコレートが
少量余ってしまったのだ。
シリアルも少しだけ残っているが、生クリームがないのでパフェを
もう1つ作ることは難しい。
「ふむ……」
取り敢えずボウルは置いておいて、洗えるものだけ洗ってしまおうと
シンクに向かった。
スポンジに洗剤を泡立てて自分の使ったグラスから洗い始める。と。
「」
「ん?ああ、エンヴィー。ありがと」
入ってきたのは空のグラスを持ったエンヴィー。
「ラースはまだ食ってる」
「そう」
はい、と手渡されたグラスにスポンジを当てたところで、エンヴィーが
の背中に抱きついた。
「え、何?どうしたの?ちょっ……エンヴィー!」
声を荒げたのは、エンヴィーの手が明確な意図を持って
の身体を這い回り始めたから。
「ちょっと!何でいきなり……っっ」
「ん?今なら抵抗されないかなー、って」
泡だらけの手には割れやすいグラス。
泡にまみれたグラスを割れば、掃除も大変だが、自分やエンヴィーが
怪我をする可能性がある。
抗いたくても抗えないに、にやりと笑ってエンヴィーは、その服の中へ
手を忍ばせた。
最初は悪戯だった。
遊びつかれたのか、床で眠ってしまったラースのいる部屋で、いきなり身体を
探られて、強く抗えなかったのはラースがいたからか。それとも……
そこから先は、なし崩しに。
最後まで身体を奪われてさえ抗えず、嫌って突き放すこともできずに。
エンヴィーの気が向けば、形ばかりの抵抗と抗議を押さえ込まれ、
身体を開かされてしまう。いつもいつも。そして、また今も。
「あ……んっ」
かつん、と音がして、思考から引きずり戻されれば、
手の中のグラスが滑って、洗い桶の中のそれに当たっている。
「グラス、置けば?もう力入らんないんだろ?」
確かに、胸の飾りを弄られて、の指はもう震えるばかりで、
グラスもスポンジも、ただようやく掴んでいる状態だ。
「ほら、。割れるよ?」
「ん……ぅ」
カチャ、と、がそっと指を離したグラスが水に沈むと、エンヴィーが
蛇口をひねり、水を出しての手から泡を洗い流した。
そして、が自由になった両手でエンヴィーを突き放すより先に、
ぎゅっとその足の間を捕らえてしまう。
「やっ……そ、んな……っっ」
そのまま何度も擦られ、揉まれてしまえば、の膝から、
かくんと力が抜けた。
くずおれた身体を床に横たえ、エンヴィーの手がの身体から
衣服を奪っていく。
「ふ……あ、あっ」
露になった胸や自身に直接刺激を加えられれば、もう抗う言葉も
口をつきはしない。
「エン、ヴィー……」
目の前の男を呼ぶ声は甘く溶け、足はしどけなく開かれた。
「どうせこうなるなら抗わなきゃいいのにさぁ」
呆れたように呟いて、けれど一瞬の後にはくくっと笑いながら
エンヴィーはの開かれた足の間に手を伸ばす。
「」
「ん……?」
「あのボウルの中身って、残ったやつ?」
ついとエンヴィーが指すのは、先程対処に悩んだチョコレート。
「うん……そう、だけど……」
「じゃあ、使っちゃっていい?」
「え?あ、うん」
問われた言葉には、ぽやっとしたまま、僅かに返った正気で受け答える。
一体何に使うのだろうと、その用途に考えを至らしめるには思考力が
足りなくなっていた。
だから、ボウルを掴んできたエンヴィーの指が、チョコレートを掬い取っても、
それを自分へと近づけてきても、ただぼんやりと、その指先を見つめるだけで。
「あ……」
ぺとりと、胸の先にそれが触れて、ようやっと。
「や……エンヴィーっ!何っ……ぁ」
けれどぬるりと滑る指先に突起を摘み取られ、静止の声は上ずってしまう。
くちくちと音を立てて塗り込まれ、送り込まれる快感に、自身が
びくびくと震えた。
「ん、何?こっちも触って欲しい?」
つう、と。チョコレートにまみれた指が、自身の裏側の線を、
付け根から先端に向けて辿り、先端の小さな穴で止まる。
そこをくにくにと揉まれて、とぷりと体液が零れ始めた。
「くぅ……んっっぁあっ」
甘い声を上げて、が身を捩った。と。
「ー!」
キッチンに入ってきたのはラース。
「ひぅっ……」
びきっと凍りつく。快楽に流されて、忘れていた。
彼がここに入ってくる可能性があったのだということを。
「なに、してんの?」
グラスを調理代に載せたラースが、不思議そうな目で、開かれたままの
の足の間を覗く。
「や……っ!ダメっ!!エンヴィー離……っっ」
「可愛いっっ」
言いかけたを遮って、ラースが声を上げた。
「へ……?」
「エンヴィーずるい。おれもまぜて」
「しょうがないなぁ」
ちっともしょうがないと思っていない顔で、というより何か楽しんでいるような
表情で言ったエンヴィーが、茫然としているに口付ける。
「今日は最後までしないから安心しなよ」
ラースもいるしね、と、にだけ聞こえるように囁いて、再びきつく
唇を奪うと、エンヴィーはラースに向けて、艶やかに笑った。
「まだ、甘いの食えるだろう?」
「うん。たべたい」
「じゃあ、コレ。舐めたげてよ」
こくりと頷いたラースに、エンヴィーが指し示したのは、
チョコレートに塗れたの自身。
「ちょっ、待っ……ああっんーっ」
嬉々としたラースに、くぷりと銜えられ、突然にきゅううっと吸いつかれた。
セックスしているというよりは、ただ純粋にチョコレートを
欲しているようなそれは、愛撫としてはかなりきついもので。
「や、だ……ラース、も、やめて……」
哀願を、ラースは聞き入れない。助けを求めて振り仰いだ先、
エンヴィーの手元を見て、は、ひくりと息を呑んだ。
「我侭聞いてもらったからね。お礼しないとだろ?」
言いながら彼は、その手に持ったものをの胸の飾りに押し当てる。
カチリとスイッチが入ると、ピンクローターと呼ばれるそれは、
無機質な音を立てながら、細かく振動を始めた。
「ひぁ……っっあ!」
胸に与えられる振動と、下腹部に与えられる吸引と。
明るい午後のキッチンで、その床に押し倒され、大きく足を広げられている。
羞恥に身体は余計に敏感になり、快感にすすり泣くを更に苦しめた。
「い、や……も、いや……ぁっ」
「ラース、次はこっち」
そう言ってエンヴィーは、チョコレートを絡めたままの胸からローターを離すと
ラースに舐めるように促した。
「ん」
こくりと頷いてラースはの横に移動し、胸の飾りを口に含んだ。
ラースがいた場所には、今度はエンヴィーが身体を割り込ませ、
スイッチを切らないままのローターを、すっかり綺麗になった代わりに、
充血しきって赤く震えているの自身の先端に押し当てた。
「ふあ、あーっあーっっ」
もういいかげん限界だと思うのに、何故か達することができず、
快感に噎ぶことしかできない。
やがて、の自身から離されたローターは、幾度か抱かれるうち、
ひくつくようになってしまった後孔へ押し当てられた。
「あ……っっ」
「もう、前ばっかりじゃ、ダメだろ?」
くつりと笑ってエンヴィーは、それをぐっと押し込んだ。
「んあぅ、あっ……っや」
「おしりで気持ちよくなって、イったら終わり」
「そ、んな……っ」
「エンヴィー、こっちも舐めていい?」
言われた言葉の恥ずかしさに、哀願を滲ませて呟くをよそに、
ラースが今までしゃぶっていたのとは逆の突起を指す。
「いいよ。ちゃんと舐めとってやりな」
「うん。は、ぜんぶおいしいから好き」
無邪気に笑ったラースが、突起に吸い付いた瞬間、ぐいっとエンヴィーの
指がローターを押した。
振動の源が、の中、抗えない快感の中枢を容赦なく抉る。
「いっ……あぁぁっっあーっ」
高く声を上げながら、は我慢しきれぬ刺激の強さに、
昂ぶりきった自身から、快感のしるしを吹き上げた。
「ふ、あっ……ぁ……」
「なんだ、もうイっちまったの?」
少しつまらなそうな顔をしてエンヴィーは、だけど約束だからとローターを
引き抜いてやった。
「あー、のだっ」
と、それまで胸のチョコレートに夢中になっていたラースが顔をあげ、
の腹に散る白濁に目を輝かせる。
「エンヴィー、これ舐めていいよね?」
訊いて、けれど返事は待たぬまま、ラースはペロペロと
舌を這わせ始めてしまった。
「や、や……んっ」
羞恥に震えて、けれど力が入らず、は抗えない。
「まったく……そんな声聞かされたら入れたくなるだろ?」
喘ぐにエンヴィーが呆れたように言って、それでも約束は破らないまま、
その指をの口に含ませた。
「取り敢えず、これでもしゃぶっててよ」
ボウルから掬い取ったチョコレートを塗れさせた指を、の口の中で
遊ばせ、ラースが満足してから舌を離すのを待つ。
幾度かボウルの中身を掬い、そろそろ中身がなくなるという頃、
甘いまどろみにとろりとなったが、呟くように口を開いた。
「……ど、して……?」
「ん?何が?」
「入れない、の……何で?……んくっ」
疑問を零すの口に、再度指を押し込んで、エンヴィーは小さく笑った。
「嘘は、ついちゃいけないんだろ?」
「ん?」
「嫌われたくないときは、嘘をついちゃだめなんだろ?」
だから、と。
「誠実、ってやつになってやるよ」
「ん……くっ」
「だから。オレたちを」
「ふ、う?」
「嫌いになるな」
まるで、哀願するようなエンヴィーの言葉に、は、ふわりと笑うと、
こく、と頷いた。
やがて、の腹の上、疲れたらしいラースが、心地良さげに
寝息を立て始め、つられたようにも、とろりとしたまま意識を手放した。
エンヴィーだけが、苦笑ともつかない表情を浮かべたまま、
眠る2人を見下ろしていた。
〜End〜
あとがき
ついつい長くなってしまいました。
3Pは微エロ、と宣言したとおり、微エロです(ホントか)
挿入ないんで微エロと思ってください(無茶苦茶)
リクエストにお応えできていると良いのですが。
暁 弓夜様、リクエストありがとうございました。
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