「じゃあねー。」
「バイバーイ」
「また明日ねー。」
小学校から、ぞろぞろと 生徒達が出てくる。
「あー、ちゃんだー。」
「ちゃん、こんにちはー」
そこを通りかかったのは、買い物帰りの。
「みんな、今日の授業は もう終わったの?」
「うん!」
「ちゃん、遊ぼー?」
「遊ぼーよ」
みんなが わらわらと の周りに集まり始める。
「わかった。いいよ。この荷物をパン工場に届けたら、広場へ行くよ。」
苦笑して は了承する。
「絶対ねー。」
「絶対だよ」
「待ってるからねーっ」
ばたばたと走っていく子どもたちを見送って、は パン工場へ向けて歩き出した。
※ ※ ※
「じゃあ、行ってきます。」
が パン工場に着くと、丁度アンパンマンが パトロールに出ようとしていた。
「あ、」
飛び立とうとしたアンパンマンがに気付いた。
「やあ、今からパトロール?」
「うん。は おつかい帰りだね。おつかれさま。」
「おつかい って、そんな小さい子どもじゃないんだから…まぁ、そうなんだけどさ。」
拗ねるの頭を、アンパンマンが ぽふぽふと叩く。
「もう!何するのさ」
アンパンマンの手を退けながら、
は しかし、それほど嫌がってはいない。
(可愛いなぁ、もう…)
アンパンマンは 自然と顔が緩むのを感じた。
「ちょっと!こんな所でイチャつかないの!」
「あぁ、ごめんなさい」
時と場所を考えなさい!と言うバタコさんに、笑顔で謝るアンパンマンは、
あまり反省しているようには 見えない。
「はい、バタコさん。これ。」
は 買い物かごを バタコさんに差し出す。
「ありがとう くん。お茶でも飲んでいかない?」
「ごめん、みんなが広場で待ってるんだ。ありがとう。」
そう が言ったら、
「みんな、って?」
アンパンマンが そう訊いた。
「小学校の子どもたち。」
「そう。」
「何?」
「何でもないよ。」
アンパンマンは笑顔だが、どこか白々しい気がするのは
果たしての 気のせいか。
「じゃあ、広場まで一緒に行こうか。」
「え。パトロールは?」
「飛ばなくてもできるし。それとも、背中に乗っていく?」
「遠慮しとく。」
即答で 遠慮されて、ちょっぴり残念…とか思ってしまう アンパンマンなのであった。
※ ※ ※
「じゃあ、次はちゃんが 鬼ね!」
ばたばたと 子どもたちが散る。
広場では、只今 おにごっこの 真っ最中。
「いーち、にーい…」
みんなより年長のの足では、すぐにみんなに追いついてしまうため、
わざとゆっくり数える。
「しーち、はーち、きゅーう、じゅう!よーし、いくぞーっ」
無邪気に走り回るは、小学生に混ざっているにも関わらず、違和感が無い。
アンパンマンや しょくぱんまん が子どもたちの間に入っても、
それなりに 浮いて見えるというのに…。
「かばおくん タッチ!」
「次は ぼくが おに だね〜。じゃぁ、数えるよ〜」
いーち、にーい…と 数える声を聞きながら、は うさこちゃんたちが
逃げている方へ 走ろうとした…のだが。
「わっ」
「はっひふっへほー。捕まえたもんねーっ」
「げっ!ばいきんまん!! 」
は、ばいきんまんのUFOから のびた マジックハンドに捕まり、
足が地面から離れている状態になっていた。
「はーなーせーっ この すかぽんたんっ!」
ばいきんまん相手に スカポンタン、などと言ってのけるのはくらいだろう。
ウィン、とマジックハンドが開き、は 地面に落とされた。
「いったぁ…」
突然のことに、咄嗟に反応しきれず、
もろに おしりを打ちつけてしまったの前に
UFOから降りた ばいきんまんが 膝をつく。
子どもたちは、どうしていいかわからず、取り敢えず成り行きを見守っている。
と、ばいきんまんの手が の あごにかかった。
「、いい加減に、アンパンマンなんかやめて オレさまのものに なれ。」
「い・や・だ。」
「この状況の意味が、わからないわけじゃ ないよな?」
ばいきんまんの顔が、に近づいていく。
子どもたちは、目の前で展開される それを、好奇の目で見ている。
「ア…アンパンマン、呼んだ方がいいかなぁ?」
「や、ちゃんなら 大丈夫だと思うけど…」
「まぁ…助けてほしいのは ぼくたちじゃないし。」
彼らのセリフの後に、括弧書きで、(つか、おもしろいし。) と書いてあることは、
や ばいきんまん、アンパンマンすら 知らない事実である。
「何?キス、するつもり?」
「この状況で、しないと思うか?」
「できないんじゃない?」
「強がり、か?」
「いや。」
薄く笑みを浮かべていると、訝しげな顔をする ばいきんまん。
そこへ、
「やあ。何してるんだい?」
アンパンマン登場。
正義のヒーローらしく 颯爽と…ではなく、
ゆったりと 歩いて 二人に近寄る。
「いい格好だねぇ、。」
「そうかな」
「僕 以外が相手だっていうのが 問題だけどね。」
にっこりと笑いながら 近づくアンパンマン。
「出たな アンパンマン!」
叫ぶ ばいきんまん。
「それより、今の状況ってのは、子どもの教育衛生上、どうかと思うんだけど。」
「そうだねぇ。もうすぐ暗くなるし…。見てたければ、見ててもいいけど…」
そう言って振り返ったアンパンマンの笑顔に 子どもたちは、
「もう 帰ろうか。」
「そうだね!」
「ぼく…まだ見て…もがっ」
まだ見ていく、と言いかけた かばおくんの口を塞いで 引きずりながら、
「じゃあ またね、ちゃん!」
「ばいばい アンパンマン!! 」
「さよならーっ」
急ぎ足で、帰って行った。
カァ と 一つ鳴いたカラスも、慌てたように飛び去った。
「誰が 脅せって言ったよ…」
「まぁまぁ、いいじゃないか。」
良いわけあるか。
「って!オレさまを 無視するなーっ!! 」
しばらく放って置かれた ばいきんまんは ご立腹である。
「ああ、そうだったね。で、。僕以外の男を相手に。何してるんだい?」
「んー。襲われてる…かな。」
「はっはっはっ!アンパンマン!! は オレさまが もらうぞ!」
「や、あげないし。つか 俺 ものじゃないし。」
冷静に切り返す。
「ばいきんまん」
アンパンマンが 笑顔で ばいきんまんを呼んだ。
「何だよ。」
「君とじゃ、どうがんばっても 百合だよ。」
瞬間、ばいきんまんの頭に 大きな岩が 直撃する幻影が見えた。
「まぁ…君が どうしても三人で、って言うのなら それでも…」
「いらん!」
じりじりと近寄る アンパンマン。
つつつ…と 後ずさる ばいきんまん。
「まぁまぁ。そんな遠慮しなくても。」
「遠慮じゃなーいっ!! 」
しりもちをついた姿勢のまま、その様子を見ている。
アンパンマンの手が、ばいきんまんに 届きかけた、その時。
「もーっ!ばいきんまん 遅いっ!! 」
「どっ…ドキンちゃん!」
いつまで経っても戻ってこない ばいきんまんを
不機嫌モードの ドキンちゃんが 迎えに来た。
「何やってんのよ。帰るわよ!」
「は、はい…」
ばいきんまんは 急いでUFOに乗り込むと、
「ばいばいきーん!」
猛スピードで 帰って行った。
「あーあ、帰っちゃった。」
「アンパンマン…実は 楽しんでるでしょ…?」
「うん。」
の言葉を あっさり肯定し、まだ座っているに 手を差し伸べる。
「ほら、立って。」
「あ、ありがと。」
「今日、の家に 行ってもいい?」
を起こしながら、アンパンマンが問う。
「それって…泊まりってこと?」
「だめ?」
「ダメって言っても 来るくせに…」
「まぁね。」
はぁ、と ため息をつくは、
アンパンマンが、
(ばいきんまんに 隙を見せるなんて、おしおき決定だよね。)
なんてことを考えていることに、
幸か不幸か、気付くことは なかった。
明日も一日、平和でありますように…。
〜End〜
あとがき
アンパンマンだけじゃなく、主人公や子どもたちまで
心なしか黒い気が…(汗。
白なのは ばいきんまんだけ?!(逆だろ ヲイ・笑)
ブラウザ閉じて お戻り下さい。