「やっほー。ばいきんまん。Hしよーっ」

「げっ っっ!ばっ…ばいばいきーんっっ」

「ちょっと、ばいきんまん!何で逃げるのさっ!」






好きだよ 好きだから





「ばいきんまーん…」


バイキン城、UFOの出口に立ってが へこんでいる。


「あら何?、またフられたの?」

「ドキンちゃん…」


うなだれるに声をかけたのはドキンちゃん。


「まったく。ついこの間まで あんなにラブラブしてたのに…」


一体何があったのよ、と溜息混じりに問うドキンちゃんは、

と ばいきんまんが恋仲になって間もないことを知っていた。


「ケンカでもしたの?」


その言葉に ふるふると首を振るは、ばいきんまんより

少しばかり背が高いくせに、まるで小動物。

うっかりドキンちゃんも ときめいてしまう愛らしさがあった。

しゃんとしていれば カッコイイと言われる枠にも入れるのだが、

くるくる変わる表情やら動作が いちいち可愛い。


「ちがう。ただ、エッチしよって 話になって…」


男同士のHの仕方を ばいきんまんに説明した途端、

彼は逃げ出してしまったのだと はぼやいた。


「あらら。まあ…わからなくもないわね」


ばいきんまんの気持ちも、とドキンちゃんは苦笑する。


「経験値からして、入れられるのは ばいきんまんでしょ?」


恐くて逃げて当然よ、なんて平然と言ってしまえるドキンちゃんを

は、何で男同士の入れる入れないについて そんなにあっさり

言い切れるほどの知識があるのと聞きたい気満々で見つめた。


「でも…だったら 俺が受けたっていいのに…」

「え?そうなの?」

「だって、アンパンマンのときは ずっと俺が受けてたし」


そう。は、アンパンマンと付き合っていたときに ばいきんまんを

好きになり、アンパンマンを振ってばいきんまんに告白したのだった。


と言っても、がアンパンマンを振った最大の理由が、アンパンマンが

戯れにチーズを使って嫌がるを獣姦しようとしたせいだったりしたので、

振られて落ち込むアンパンマンを見て事情を聞きに来た

カレーパンマンは眩暈を起こしながら、しょくぱんまんは苦笑しながら、

そりゃアンパンマンの自業自得だと納得してくれたのだったけれども。


「でも、身長差とか見ると、やっぱり ばいきんまんが…」

「んー、あんまり関係ないよ、身長とか」

「そうなの?」

「そうなの」

「ふーん。べつに がいいならいいんだけど」


確かになら どっちでも問題ないわ、と すぱっと言い切った

ドキンちゃんて一体…と、は またじっと彼女を見つめてしまった。


「じゃあ、セッティングしてあげるから がんばりなさい」

「え?」


何?一体何のセッティング?と 目を瞬かせるを、


「いいから いいから」

「え?え?」


ドキンちゃんは、にーっこり笑って つるりと裸に剥いてしまった。


「えぇぇっ!?」








  ※   ※   ※








与えられたのは、真っ白なシルクのYシャツ1枚。

の自身がギリギリ隠れるほどの長さのそれを、一体どこから

調達してきたのやら、と考えて少し背中に寒いものを感じる。


「ドキンちゃん…一体何する気なの…」

「いいからは黙って隠れてなさい」


シャツ1枚。下着も与えられず、すかすかする下半身を持て余しながら

が身を潜めているのは ドキンちゃんのUFOの陰。

ばいきんまんが帰ってきてUFOをとめるのとは逆側に、シャツの裾を

引っ張りながら、胡坐をかいて居心地悪そうに座っている。

ドキンちゃんは、から見えないところで何やらやっている。


「ねぇ、ドキンちゃ…」

「うるさいわね。黙らないと白いハイソックスはかせるわよ?」

「うっ…」


Yシャツ1枚に白いハイソックスなんて微妙に間抜けな恰好を、

一体誰が萌と言ったか。

ただ恥ずかしいだけじゃないかと心底嫌そうに顔を顰めるは、

その羞恥心が格好のエサになることを知らない。


「わっ!ばいきんまんが帰ってきちゃった!」


ドキンちゃんの声に、は びくりと緊張する。


「じゃ、、合図したら こっちから出てきてね」


UFOの陰から ひょこりと顔を出したドキンちゃんは、

楽しそうに笑いながらウィンクして見せた。


「う…うん」


何をどうセッティングしてくれているんだろう、と 一抹の不安を抱えながら

こくりと頷くは、自分の恰好を見下ろして、ふぅ と息を吐いた。

と、ごうん と音がして、ばいきんまんのUFOが城の中に着地したことを

の耳に知らせる。


、いいわよ」


ばいきんまんから見えないように、言われた通りにドキンちゃんの

UFOの うしろを回る。


「あ、そこに立ってて」


ばいきんまんのUFOと廊下への出入り口の間に立たされたは、

もう どうにでもなれの心境で ばいきんまんがUFOから降りてくるのを待った。

ぱしゅん という音と共にUFOのガラス部が上がり、

ばいきんまんが ひょいと飛び降りてきた。と、


「っっ!」

「ぅわっっ」


を見つけた ばいきんまんが その名前を呼ぶ前に、

が驚いて声をあげた。


「はい、いっちょあがり」


にーっこりと笑って、ドキンちゃんが2人に近づく。その手には 空のバケツ。

言葉もなく立ち尽くすからは、したしたと水が滴っている。


「ちょっ、ドキンちゃん!に何てこと…」

「あんたが ハッキリしないからでしょうが」

「だからってに水ぶちまけるなんて…!」

「というか、俺は このカッコにつっ込んでほしい…」


何でシャツ1枚?とか出てこないの?と問うを直視して、

ばいきんまんは びきりと固まった。


「え?あれ?ちょっと ばいきんまん?」


白いシルクのシャツに、大量の水がかかれば どうなるか。

そんなものは言わずと知れよう。

濡れたシャツが素肌にくっつき、肌の色が透けさえする。

は今、まさに その状態なのだ。


「さ、お膳立てはしたわ」


固まっている ばいきんまんと、水を滴らせているを見て、

ドキンちゃんが微笑む。


「ばいきんまん。早くにシャワー貸したげなさい」


そう言うと、ドキンちゃんは くるりと踵を返して廊下へと向かった。

お礼は、しょくぱんまんさまの休暇日程でいいわよ、と

ウィンクを投げて、ほどほどにねー、と言い残して自室へと

戻っていったドキンちゃんを見送って、は さてどうしたものかと思う。


「あの…ばいきんまん…?」


固まっている ばいきんまんに近づいて、目の前で ひらひらと手を振ると、

はっと我に返った ばいきんまんは、ふいっとから 目を逸らしてしまう。


「あ、ごめ…ん。俺、着替えるね」


着てきた服はドキンちゃんのUFOの中に放り込まれている。

それを取ろうとしたら、ばいきんまんが くんっとのシャツの裾を引いた。


「な、何…?」

「中、濡れたら 怒られる」

「あ。ああ、そだね」

「俺が、取ってやるから…」

「うん」

「あと、シャワー…貸す」

「うん…」

「あと…」

「うん?」

「…しばらく…そのままで いい…」

「うぇ?」


流れで頷こうとして、驚いた為に、は変な声を出してしまう。


「嫌なのか?」

「え?や、嫌じゃない。嫌じゃないよ」

「あと…」

「ん?」

「えっちは…その…入れるのは…」


したくない、と俯く ばいきんまんは、自分が受け入れることを想像して

少し顔色が悪くなる。


「ねえ、ばいきんまん。俺が、受けてもダメ?」


したくない?と、ちょこんと首を傾げて、が問う。


「え?」

「俺に、入れて?」

「そっ…なっ…だって…!俺は…したことないんだぞ…っ?」


の言葉に、そんなことは思ってもみなかったのか、

ばいきんまんが声を上げる。


「大丈夫、俺が、教えるから。ね、しよ?」


そっと ばいきんまんの手を取って、が強請る。

ばいきんまんは、しばらく逡巡して、の手を きゅっと握り返すと、

小さく こくりと頷いたのだった。








  ※   ※   ※








「ん…ぁっ」

「これで…いいのか?」

「あ…んっ!いい…よ」


のリードで始まったセックスは、ばいきんまんの発明家たるゆえの

飲み込みの速さで、順調に展開した。


「んんーっ」


背後から、四つん這いになった腰を抱えられ、穿たれて、

イイところを擦り上げられ、は その表情を とろとろと蕩かしていく。


「あっ…ばいきんまん…んっっ」

「何?痛く…した?」

「ちがっ…あっ…!」

…?」

「す…きっ…だいすき…だよっ」


きゅうきゅうと ばいきんまんを締め付けながら、感極まった

ぽろぽろと涙を零す。


「っ…!」


その締め付けと表情に、危うく達しそうになるのを堪えながら、

ばいきんまんは を背中からぎゅっと抱き締めた。


「俺も…すきだ。だいすきだ。…っ」

「あぁっんーっ」


速くなる鼓動が重なる。

ぴったりと くっついた身体から、とくとく と、互いの心音を感じ取る心地良さ。

1つになる心地良さ。好きだから、感じることができる、心地良さ。

白く混濁していく意識は甘く、2人を溶かしていく。


解放。脱力。ひどく甘い感触の中、同時に迎えた絶頂は、

の口元に やわらかな笑みを与えた。


ゆっくりと身体を離して、今度はが ばいきんまんの胸に

顔を埋めるようにして 2人、ベッドに横になる。


「ばいきんまん…」

「ん?」

「すごく…よかった」


ふんわりとした気分のまま、は言葉を紡ぐ。


「今、すごく…幸せ」

…」

「ばいきんまんは?よかった?」

「っ…」


の質問に、ばいきんまんは黙って赤くなる。


「よくなかった?」

「そんなことは…」

「じゃ、よかった?」

「…うん」

「また…しようね?」

「う…うん」

「えへへ」


もう しないって言われなくてよかったー、と ばいきんまんの胸に

額を擦りつけながら は ふにゃっと苦笑のような笑みを浮かべた。


「すきだよ、ばいきんまん」


そんなの表情に、ばいきんまんは 赤くなって、

それから 意を決したように の耳元に口を寄せる。


「俺は…愛してる」


直後、目を合わせたまま、言った方も言われた方も、

熟れたトマトのように赤くなってしまった。

そっと互いの顔から目を逸らした2人の、けれども その口元は、

幸せそうな笑みに 形取られていた。
















〜End〜





あとがき

久しぶりの擬人化菌。明るく赤マークです。
前に書いた話と似てますが繋がってはいません。
菌はどうしても恋愛に晩熟になりがちで…
もう少し、ずばっと恋愛できる菌を書いてみたい…。
それにしても、ドキン嬢…出張りすぎだ…(笑。

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