出会いなんか、最悪以外の何でもなかった。
なのに何で 絆されてしまったのか…
広いベッドの上、鈍痛の走る腰を 何とか誤魔化しながら起き上がる。
隣に寝ているのは、2つ年下の…恋人。
その響きを、くすぐったく感じているあたり、俺はもう完全に
こいつに囚われてしまったのだろう。
この強引な男、跡部 景吾に…。
放課後、公立高校の もう古くなり錆付いた校門を出ると、
目の前に黒い高級車が止まっていた。
嫌な予感に、そっと 横をすり抜けようとしたら、
案の定と言うか、あっさり車に引っ張り込まれた。
「学校までくるなって言ってるだろ!」と怒鳴っても、
怒鳴られた本人、景吾は 飄々と聞き流してくれ、
景吾の家に着くなり、ベッドに引っ張り込まれた。
で、まぁ 今に至るわけなんだけど…。
ふう、と 小さく息をついて 眺めていた その寝顔から視線を逸らし、
そのままベッドを降りようとしたら、伸びてきた腕に 腰を捕らえられた。
「え…あっ ちょっ…」
ぐいぐい と 引き寄せられ、いつの間にか組み敷かれている。
「どこへ行くつもりだった?」
見下ろしてくるのは、寝起きの気だるさを含んだ キレイな目。
「シャワー浴びてくる。もう帰らないとさすがに…」
「泊まってけ。」
「は?」
今、何か聞こえたか…?
…泊まってけ?
「あのなぁ、明日は平日で 学校は休みじゃないんだぞ?」
「お前の家には連絡した。学校へは ここから行けばいい。」
「連絡って…明日使う教科書とか全部家に…」
「そんなもん 人に借りればいいだろう?」
「いいわけあるか!それに要提出のプリントだって…」
「明日の朝、お前の家経由で学校まで送ってやる。」
それなら文句無いだろう?なんて、
言ってのけてくれやがったよ この男は。
「あるに決まってんだろ!どうして お前はいつもそう…」
「」
「何だよ。俺は お前の強引さが最初から…」
「」
真剣な声で名前を呼ばれて、
組み敷かれたままの俺は、渋々と景吾を見上げた。
「今日ぐらい、素直に言うこと 聞いてくれねぇのか?」
「は?」
何だ?今日ぐらいって…
「今日に限らず俺様なくせに、何なんだ それは。」
「そうじゃねぇよ。」
「何が そうじゃないんだよ。」
「だからっっ」
言いかけて、景吾が ぴたりと 止まった。
「、お前…まさか 知らねぇのか?」
「何を?」
「……日。」
「は?何?」
声が小さくて聞こえない。
もっと はっきり言いやがれ。
「誕生日。」
「誰の?」
「俺の。」
「景吾の?」
「そう。」
「知らない。で、いつだって?」
「…今までの話で、わかんねぇか?」
今までの話…で…?
って、まさか…
「今日、なのか?」
無言で こくりと 頷く景吾。
「あ…そう。おめでと。」
「何だよそれ。もっと 何かねぇのか?」
「や、特には。」
言った途端、見下ろす景吾の視線が 鋭いものになる。
「お前は最初からそうだ。俺が好きだっつってんのに…」
「最初からって、お前それ、お前が悪いんだろ!?」
景吾と出会ったのは、友達に無理矢理連れて行かれた
プロテニスの試合会場。
そこで 偶然会った景吾に、気付けば俺は、唇を奪われていた。
そうして、氷帝学園の制服を着た景吾は、
にやりと 不敵に笑ったのだった。
その笑みには、正直 見惚れたさ!けどな!
何が悲しくて 初対面の、しかも年下の男にキスされた挙句に
好きだ付き合え なんて言われなきゃならないんだ!
って 思うだろ、普通は。
しかも その時 制服を着ていたせいで、
学校にまで おしかけられる始末。
「が 最初から素直に頷いてりゃ学校まで行ったりは…」
「頷けるか!大体 お前は…」
「俺に求められて一体何が不満…」
「全部だよ!っつか話は最後まで言わせろ!」
「お前だって 言わせねぇじゃねぇか!」
ベッドに押し倒されたまま、
しかもタオルケットの下は お互い 素っ裸で、
こんな色気の無い言い争いができる俺たちは、
もしかして すごいんじゃなかろうか。
ぜぇはぁ と 息を吐きながら、取り敢えず睨み上げていたら、
同じく肩で息をしていた景吾の唇が、俺の それに重ねられた。
「ん…っ」
「もう…何でもいいから 泊まってけよ。な?」
「何でもいいわけ ないだろ。」
「。泊まってけ。」
命令形で言うくせに、その声には 強請るような色が含まれていて。
「はー…ったく。今回だけだぞ、こんなのは。」
そんな景吾を 愛しいと思ってしまう自分に内心苦笑しつつ頷けば、
景吾は 満足そうに笑った。
「今日は誕生日だって言うから、聞いてやるだけだからな。」
取り敢えず 図に乗らないように釘を刺すと、途端 不機嫌な顔をする。
…面白いな こいつ。
「この強情っぱり。」
「俺様野郎に 言われたくないね。」
「なっ…」
「次は!」
何かを言いかけた景吾の口を手の平で塞いで、
「俺の意志で 泊まりに来てやる。」
そう言ったら、景吾の目が、驚いたように 大きく開かれる。
ま、実際 驚いたんだろうけど。
と、手の平に くすぐったさを感じた。
「こら、景吾っ!いきなり舐めんな!」
慌てて手を離そうとするけれど、手首を捕えられて叶わない。
「や…くすぐった…っ」
ぺろぺろと、まるで仔猫がするように 手の平に舌を這わされると、
身体が それを勘違いしてくれたらしく、あらぬ所に熱が溜まっていく。
「景吾っ!ばか…やめ…っ」
「泊まってくんだから いいだろう?もう一回。」
言うなり 俺の手首を掴んでいるのとは逆の手が
下腹部に落とされる。
「あ…っっ」
「そんな声出すなよ。止まんなくなるじゃねぇか。」
「じゃ…触んなっ…あ、やっ」
ぐりぐりと 自身を撫でられて、抗議の声は 甘く溶けてしまう。
「あと一回で、済むかどうかは お前次第だな。」
「な…んっ…」
「明日 学校に行きたかったら、早く俺を満足させることだ。」
ってそれ 約束変わってるじゃないか!と 叫ぼうとしても、
景吾の愛撫に慣れた身体は 言うことを聞かない。
「愛してるぜ、。」
言われて、ぐん と熱が上がるのを感じた。
覆い被さっている景吾を見上げると、
そこには何かを求めているような目。
ったく…しょうのない…。
「俺も、好きだよ バカ景吾。」
「バカは余計だ。」
じゃれ合うようにセックスして。
結局それじゃ足りなくて、もう一度されて。
明日寝坊したら、1週間くらい 禁欲を強いてやるつもりで、
一緒に眠った。
取り敢えず、おめでと 景吾。
〜End〜
あとがき
ハッピーバースディ景吾たん。
年上主人公にしてみましたが…いかがでしたでしょうか。
景吾…ちょっと生意気すぎだったかな〜…と思いつつ。
景吾ならこんなもんかしらとも思わないでもない(笑。
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