何で こんなことに なってんだ…?


ラブホテルの広めのベッドに 仰向けに転がる自分。

その俺の、伸ばした腕を枕に すよすよと眠っている

綺麗な顔。


クラスメイトの 。性別 男。


俺は さっき、こいつと セックスをした。






望む僕と 応える君と





初めて本気の恋をした。

友達の延長戦のようだった それまでの恋愛感情とは

一線を隔したもの。


男である俺が、男であるに抱いた その感情…

いや、激情と言うべきだろう欲求を、

まだ中学生である自分が 抱えきれるはずもなく。


学校では『宍戸』と呼ばれるたび、

その笑顔を見るたび、

暴走しそうになる思考を 必死に抑えつけ、


家に帰れば 自室に閉じこもり、

まあ なんつーか、一人でこっそり致したりするわけで。


そんな日々の中に訪れた 自分の誕生日という

いつもなら ただのイベントでしかないそれが、

俺を暴発させてしまった。


きっかけは、の 一言。








  ※   ※   ※








「なぁ宍戸、誕生日プレゼント 何が欲しい?」


昼休みの教室。

机に突っ伏して寝ていたら、ごく近くにの声が聞こえた。


「あ?」


そこで 何気なく顔を上げてしまった自分を、

俺は一瞬にして呪った。


目の前に、の 綺麗な顔が…っっ


は、机の前にしゃがみ込んでいた。

ゆえに、俺が顔を上げれば、至近距離で真正面から

見つめ合ってしまうわけで…


「宍戸?」


びきっ と、フリーズしてしまっていた俺は、

の声に、がばっと 勢いよく 跳ね起きた。


「な、何だ 、何か 用か?」


慌てて言って、しゃがみ込んだままのを見下ろして、

また後悔。


上目遣いに見上げられて、欲望に忠実な下半身がやばい。

…若さゆえに仕方なし、とは括れないほど

やばいことに なりはじめている。


「だから、プレゼント。何が欲しい、って聞いてんだけど。」

「あ、ああ、そうだな!プレゼントな!」


そんな 拗ねたような声を出してくれるな 頼むから!

普段のは、可愛い系というより 綺麗系で、

身長だって170近くある。

そんなに、こんな可愛い行動されたら!


「宍戸?何なんだよ さっきから。聞いてんのか?」

「あーっと、ごめん、俺 ちっと…トイレ行ってくる。」

「え、何?もしかして 具合悪かった?」

「あ、いや、うん。ちょっと 腹が、な…」


目立つほどじゃないが、確実に やばいことになっている それを

さり気に庇いながら席を立ち、に背を向けて歩き出した。


あーもう…激ダサ…。






で、結局俺は、トイレにはいかずに 屋上を目指した。

風に当たれば熱も冷めるだろう と、思ったんだが…


「何や 宍戸か。」


ドアを開けた途端に聞こえた忍足の声に、

風に当たって 黄昏る前に 気持ちが しんなりと 萎えてくれた。


「俺じゃ悪いってかよ?」

「いや。でもまぁ これがやったら 良かったとは思うよ?」


にやり、と 笑って 俺を見る忍足。

………むかつく。


「ったく。お前に恋愛相談なんてした 俺がバカだったぜ。」

「んー、バカは好かんなぁ…」

「自分のこと 言ってんだけど?」

「そんでも好かん。」

「あ、そ。」


そんなことを 真面目に訴えてくる言葉を聞き流していたら、


「で?その宍戸くんは、にフられたん?」


さらりと 話題を嫌な方に変えてくれやがった。


「フられてねぇ。告ってもねぇ。つか ほっとけ。」

「ほっとけるかいな。乗りかかった船や。」


俺がに恋をした と、この男・忍足は

あっさり見抜きやがって、何かと世話を焼きたがる。


「お前って お人よし…」

「お褒めに与り光栄です。」

「褒めてねっつの。」


こんなやり取りをして、何故だか落ち着いてきている

自分が不思議だ。


「特に 何があったわけじゃねぇんだよ。」

「ほんまかいな…。お兄さんに話してみ?楽んなるよ?」

「お前 俺より誕生日遅ぇだろうが。」




なんて、気を緩めたのが いけなかったのかもしれなかった。

放課後、再度問われた それに、ついうっかり 言ってしまった。


「お前。」


なんて、ばかみたいなことを。

は 驚いたように目を瞬いている。

慌てて冗談だと言い継ごうとして、

それよりも先に 口を開いたに 遮られた。


「わかった。宍戸の誕生日には 俺をやろう。」


そう言ったは、にっこりと 笑っていた。


「え…」


今度は 俺が 目を瞬く番。

言われたことが脳を素通りしかけて、

しかし 俺の欲求が それを脳内に引き止めた。


「じゃ、29日の放課後は 空けとけよ。」

「あ、え?あ…」

「さて、帰るか。じゃぁな 宍戸。部活がんばれよ。」


そう言って 軽く手を上げたの笑顔が艶やかで、

つい見とれた俺は、ぼーっと 手を上げ返すのが

精一杯だった。








  ※   ※   ※








そんなこんなで、至る現状。

件の日の放課後は、あっさり訪れた。


一旦帰って着替えてからの待ち合わせ。

に連れてこられたのは ラブホテル。


男同士の やり方は知っていた。

つーか忍足に無理矢理レクチャーされた。

も それなりに知っていたようで、

事も無げに初Hっつーもんは、終了した。


「ん…」


ぼへーっと 天井を眺めていたら、が目を覚ました。


「んー…おはよ。」

「お、おう…。」


むくりと 起き上がったは、軽く目を擦りながら

欠伸をしている。

…可愛いんだけど、かなり…。


「あー…腰 痛い…」


ぽつりとの口から出たコトバに、


「色気ねぇな。」


からかい半分に そういったら、


「俺に色気なんて 求めんの?」


なんてセリフと共に、艶やかな笑みを寄こされて、

心臓がはねた。

ついでに 息子も 跳ねちまって みたりして…


「ん?何、どしたの 宍戸?」


咄嗟に やばい という表情をしていたのだろう。

が ひょい と、覗き込んできた。


近いっ 近いって!う…わ、も、だめかも…。


「宍戸?…あ。」


気付かれました。

そりゃそーか。同じ布団被ってんだもんな…。


「足りなかったか?」

「いや、あの…な、これは…その…」

「もっかいする?あー、でも 時間無いか。」


さすがに中学生が、こーゆーところに泊まりはまずい

つか明日も学校だからってことで、今日は休憩で

部屋を取っていた。


「よし、じゃあ 口でしたげよう。」

「は?」


驚いている間に、の頭は 既に布団の中。


「え…ちょっ、おいっ」


ぺろりと、舌の感触。

それが のものだというだけで、

凄まじい快感を もたらす。


何で、は こんなことを…?


俺はに 好きだとは告げていない。

も 何も言わない。


にとって、これは 只の誕生日プレゼントなんだろうか。

俺にとって これは…何?


「っ…ぁ…」


声を堪えれば 吐息に変わり、それを聞きつけたのか、

は 俺を追い上げにかかった。


「く…ぁっ」


限界を感じ、の頭を押しのけようとしたら、

逆に強く吸われ、そのまま放ってしまう。

こくり と、の喉が 鳴った。


「え…まさか お前 今 飲…」

「ん…。苦い…。」

「そりゃ甘くは無いだろーけど…って そうじゃなくて!」


今、何の躊躇いも無く 飲み下さなかったか?!


「何で…そんなこと すんだよ?」

「そんな…こと?」

「だから!飲んだり…とか。」

「え?だって別に 宍戸のだし…」


特に何でもない風に言われて 混乱した思考は、

自分で答えを導き出そうとすることを やめた。


「俺が、プレゼントは お前がいいって、言ったからか?」

「まぁ、そうかな。」

「そうか…」


やっぱり は 心の広い奴で、俺が それがいいっつったから

自分の身体を差し出してくれたわけで、ってことは、

この行為にも それ以上の意味 なんてのは ないわけで…


「なぁ 宍戸…何か 誤解してない?」

「は?何を?」

「何か 悶々と考えてるみたいだけどさ、」


言いながら 溜め息をつく


「お前じゃなかったら、俺なんて やんねぇよ?」

「え…」

「宍戸は、俺以外でも ああ答えたわけ?」

「そんなわけ…」


あるはずがない。

俺は が好きだから、つい ぽろっと

言っちまっただけで…。


「なぁ、だったら、わかんねぇ?」


俺の顔を覗き込んでくる

期待しちまって…いいのか?


「それとも宍戸は、俺の身体しかいらない?」


身体しか…?


「今日の これだけで 満足?もう、いい?」


今日だけで 満足?そんなわけないだろ…

でも、言っちまって、いいのか…?


、あの…さ…」

「何?」

「俺…」


あー…くそ、情けねぇ!

緊張で 声が震えやがる…


「俺…お前が、好きだ。」


言ってしまった。告げてしまった。

もう 後戻りは出来ない。


恐る恐る の方を窺えば…

そこには 笑顔で俺を見ている


「俺も、好きだよ。亮。」

「っ…」


初めて 名前を呼ばれて、顔が熱くなる。


「あ、一つ言っとくけど、俺、全部亮が初めてだからね。」

「へ?」

「大事にしてよね、亮。」


にーっこりと笑ったに、

俺は この笑顔には敵わないであろう自分を悟った。


「俺も、全部 お前が初めてなんだけど?」


と、悔し紛れに言ってみたら、


「じゃ、心から 愛してやるよ。」


なんて言われて もう完敗だ。


「さて、帰ろうか。親も心配するしねー。」


と言ったの腰を抱き寄せて、


「時間もねーし、一緒にシャワー浴びようぜ。」


と言ったら、


「え、マジ?」

「マジ。」


めちゃくちゃ赤くなって 俯いちまった。

おお、何だか 今 俺 優位?


「俺が 中、全部 奇麗にしてやるよ。」

「えっ」

「だって腹痛くなったら困るだろ?な。」

「っ…」


耳まで赤くして睨んでくるの頬にキスをする。

今日は 今まで生きてきた中で、一番幸せな誕生日だと思う。



さんきゅな、















〜End〜





あとがき

宍戸さん!お誕生日おめでとうございます。
なのに何だかヘタレっぽくて…ごめんなさい。
微エロなんだか下ネタなんだか
それも よくわかんなくて ごめんなさい(汗。
ごめんなさいばっかりですが、
めでたいので 許してやって下さい(苦笑。

ブラウザ閉じて お戻り下さい。