「亮?眠いの?」
「んー」
部活が終わって真っ直ぐに、宍戸は家の近所のマンションで
一人暮らしをするの元を訪れていた。
は、宍戸の兄の友人であり、彼が小学生の時分から、
兄を通じて交流があったのだが、宍戸が中学2年の折に恋情を訴え、
が受け入れて関係が変わったという経緯がある。
それから度々、宍戸は平日・休日問わず、勉強を教えてもらうという
名目で、の部屋に遊びに来るようになったのだが…
「亮ってば…もう」
しかし、今日の宍戸は、が お茶を淹れに行っている間に、
ソファに座り こくりこくりと船を漕ぎ始めてしまい、が戻る頃には
もうすっかり崩れたような体勢で 夢の世界へと引き込まれかけていた。
「寝に来たの?まったく…しょうがないな」
そう言ったが、でも約束は守ってあげなくちゃね、と 口角を笑みの形に
引き上げたことにも気付けずに、宍戸は夢うつつを漂っていた。
※ ※ ※
「…あ?」
どのくらいの時間が経ったのか。
ソファの上で目を覚ました宍戸が最初に目に留めたガラス窓の外は、
もうすっかり暗く、夜の空気を漂わせているようだった。
と、ぴちゃりと 水の粘つくような音と共に、宍戸の背すじに強い刺激が
電流のように走った。
それが快感だと気付いたのは、火照った下腹部が ひやりとした
空気の感触に曝され、それが ひどく心地良かったからだ。
「ようやく お目覚め?」
「え…?はっ?!」
聞こえてきたの声に その所在を確かめようとして、
宍戸は 驚いて目を見開いた。
「おはよ」
にっこりと笑ったが、ぴん、と指先で弾いた宍戸の自身は、
既に熱を湛え、ぬらりと濡れて蛍光灯の明かりに粘液が光を返している。
先ほどの水音は の口淫によるものであったのかと、冷静な部分で
判断する自分の身体を不思議な気分で見下ろす宍戸の その両手首は
細い紐で きっちりと括られ、胸の上に置いてあった。
Yシャツは着たまま前だけ肌蹴られ、下肢は下着もスラックスも
引き抜かれている状態は、熱を籠らせた自身が視界に入ることによって
宍戸の目には ひどく滑稽に映る。
それを屈辱的に感じるより先に、情けなさが溜息を誘うのは、
相手がであるが故の諦めが 彼の中に存在するからだろう。
「何やってんだよ…」
「何って…前戯?」
「ぜ…っ」
問うた声に さらりと答えられ、その率直さに宍戸は つい絶句してしまった。
じゃあ何で縛られてるの、とか。何で人が寝ている間に、とか。
取ってつけたように わたわたと問えば、
「時間ないのに寝ちゃった亮が悪いんでしょ」
今日、何の日だか覚えてるよね?と問い返すは笑顔であれど、
その口調は 「覚えていない」と返すことを許さない響きを持ち、
さらに自身を きゅっときつく握り取られてしまうというオプションまでついた。
「うっ…」
くびれに食い込んだ しなやかな指先に、きゅうっと力を込められて
呻きつつ、宍戸は 今日が約束の日であったことに思い至り、即座に
うっかり眠ってしまった自分を恨んだ。
「ごめん 。俺が悪かった」
「わかればいいんだけど」
与えられる痛みと快感に顔を顰めながら謝る宍戸に、
はそう言って にこっと微笑む。
しかし、その手は力を緩めることなく、宍戸の自身を甘く苛め続けている。
「…っ?あの…」
「ん?」
「これ…解いて欲しいんだけど…」
上がる息を抑えつつ、腕の拘束を解いて欲しいと、
宍戸は控えめに訴えてみるが、
「だめ」
ハートマークでも飛びそうな甘やかな笑顔で さらりと却下された。
「何でっ」
「ふふっ…おしおきは、必要でしょう?」
約束忘れて寝ちゃった悪い子にはね、と言い放つの笑顔に
宍戸は自分のバックバージンの危機かと本気で青ざめ、
けれど 再び自身に施され始めた口淫の その巧みさに抗えず
ただ ソファに身を沈めることしか出来なかった。
※ ※ ※
宍戸がと交わした約束は、夏休み明けの実力考査で、
全科目 平均点を上回る点数を取ること。
そして、その ご褒美として、は誕生日のプレゼントとして
宍戸の望むものを与える、というものだった。
先日、全ての結果が出た折、宍戸が望んだものは、中学生なんだから
節操を持て、と出された平日セックス禁止令の特別解禁。
要は、誕生日に思いっきりセックスしたいと言うことで、
「ん…っっ」
けれど、翌日が平日な この日に外泊はまずいだろうと、
泊まりはなし、とが条件を出したせいで時間が無いというところに、
当の宍戸が あっさり寝こけてしまったものだから、
としては 少しばかり 面白くなかったのである。
「ふ…ぁっ」
「っ……加減、しろよ…っ」
イっちまう、と泣き言を零す宍戸の自身は、の後孔に飲み込まれ、
ぎゅうぎゅうと締め上げられていた。
両手首を縛られたまま、ソファに仰向けてに乗られている宍戸は、
口元に うっすら笑みを浮かべたまま自らの雄を喰らう男の媚態に、
反撃に出ることも出来ず、息を喘がせる。
「あ…んっ…して、るよ?とっても 加減してる」
「っ…!」
「足りないよ…亮」
もっと、もっと俺をあげるから、と微笑を浮かべるの その淫靡さは
未熟な雄には きついほどの刺激になり、さらに宍戸の息を上げる。
結合部から ぐしゅぐしゅという音がするほどに腰を使われ、
宍戸がの中に精を吐くと、も 満足そうに笑って、
宍戸の腹に、白濁を飛ばしたのだった。
※ ※ ※
「ひでぇ…」
コトを終えて、シャワーを浴びたあと、今度は うつ伏せにソファに
倒れこんだ宍戸は、ローテーブルを挟んで向かい側に
クッションを抱いて座るに視線を流しながら、ぼそりと呟いた。
「何が ひどいって?」
俺は約束を守っただけでしょ、と 淹れたばかりの紅茶を啜りながら
が返す。
「俺が したかったのに…俺が…」
ぶつぶつと 繰り返す宍戸は結局最後まで主導権を
渡して貰えなかったことに、拗ねてしまっていた。
「ったく…いつまで じめじめしてる気?」
「じめじめって…!だってが…っ」
「亮、うるさい」
の発言に反論しようとした宍戸の口は、テーブルを回ってきた
のそれに、あっさりと塞がれた。
「んぅ…んーっ」
まだ文句を言いたそうな宍戸の口を、乱暴なほどのディープキスで、
抵抗がなくなるまで塞いでいたは、ちゅっと音を立てて唇を離すと
宍戸の胸に、小さな袋を押しつけた。
「ん…何?」
カサリとした その感触に、宍戸が首を傾げる。
「プレゼント、だよ。誕生日、おめでとう」
「え…でも、プレゼントは…」
セックスだよな?と問う宍戸に、は ぷいっと横を向きながら、
「だって、何か形にしたかったんだよ」
と、小さく言った。よく見れば、その頬は 薄っすらと桃色に染まっている。
実用的なものを選んだ、と が言った通り、袋の中には
黒いリストバンドが入っていて、宍戸は くつりと笑った。
「何?」
急に笑みを零した宍戸を、が訝しげに見遣る。
「いや、これでいつも…」
その視線に絡めるように、宍戸の瞳がを捉えた。
「が 俺の側にいてくれる」
見つめながら言った途端、の顔が、ぐぁっと赤く染まった。わたわたと
クッションを引き寄せ、顔を埋める姿は、先ほどまでのからは
想像もつかない可愛らしさで、宍戸は嬉しそうにに抱きついた。
「可愛い、」
「…バカ」
悪態をつきながら、けれど身を預けてくるを、ぎゅう と抱き締めて、
宍戸は とてもとても 幸せそうに 笑うのであった。
〜End〜
あとがき
はっぴーばーすでぃ宍戸さん。
そんな貴方には年上の襲い受主をプレゼント。
打ち込んでる最中 すっげぇ眠くて参りました(苦笑。
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