明けても暮れても





「あけまして おめでとう」

「おめでとさん」


ワンルームマンションの、の部屋。ベッドの上。

交わす挨拶は、新しい年を喜ぶもの。


「で、どうして ここにいるの?」


正月一日。

朝、目が覚めたら、忍足が 自分の上に覆い被さっていた。

取り敢えず笑顔で挨拶をしたは、さらに にこりと微笑んで

覆い被さる男を見上げる。


「会いたかったからに 決まってへん?」

「あ、そう」

「そう」


そういうことを問うているのではないのだが、と

は 内心ゆったりとツッコミを入れる。


「取り敢えず、退かない?」

「退かへんよ」

「退かないの?」

「うん」

「あ、そう」

「そう」


現状と彼の発言を合わせて考えれば、忍足が何をしたいのか、

なんて 丸分かりなのだが。


「取り敢えず言っておくけど」

「何?」

「しないよ」

「何を?」

「エッチ」


今から姫始め、とか 言わないでね、と は ざっくり釘を刺す。


「言うたらあかんのん?」

「うん。言っちゃだめ」

「俺は したいんやけど…」

「俺は したくないんだよね」


にーっこりと笑って、は 見下ろしてくる忍足を見上げる。


「俺は こんなにのことが好きやのに」

「俺も 好きだよ?」

「せやったら、しよ?」

「しないよ」


笑顔のまま、ずばっと要求を切って捨てるの考えていることが

分からず、忍足は 渋々と身を起こした。


は 俺んことが嫌いになったんや…」

「好きだよ」

「うそや…」

「ほんと」

「せやったら……ぅんっ!?」


何故、と問う前に起き上がったの唇が 忍足の それを塞ぐ。


「今日は初詣に行くからね」


朝ごはんも 仕度しなきゃならないし、と言うは、

ちゃんと忍足の分も おもちを用意していた。


「食べるでしょ?おもち」

「…うん」

「行くでしょ?初詣」

「…うん」


拗ねたように、それでも素直に頷く忍足に、は くつくつと笑った。


「今夜は、泊まっていくんでしょ?」

「え…」

「あれ?帰るの?」


意外だと言うように目を瞬かせて、が首を傾げる。


「や、いや、泊めて!泊めたってっ!」

「ふふ。姫始めは 正月二日だもんね」


再び にっこりと笑ったは、すっと忍足に近寄ると、

両腕を彼の首に絡め、ぐいっと引き寄せた。

バランスを崩して抱きしめられる形になった忍足の耳元に口を寄せ、

は いたずらっぽく笑う。


「今年は、去年より もっと、俺のこと、好きになってね」


囁かれた言葉に、忍足は 理性を切れさせかけて、

再びに諌められる はめになった。


新年早々 手綱を取られる形になってしまった忍足は、今年も

には敵わないのだろうかと 少しだけ切なくなりながら、

楽しそうに食事を仕度するを、幸せそうな瞳で

眺めているのだった。












〜End〜





あとがき

またまた ちょっと短めに。えっちなしで。
マイペース主人公。今年も健在です(笑。

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