甘く ミルクチョコレート





「それ…どーすんの?」


放課後。だんだんと暗くなる帰り道を歩きながら、

は 隣を歩く恋人に、少しばかり呆れたように問うた。


「食べる…しか ないやろな。」


答える関西弁は 苦笑を含み、それ、と指された紙袋が、がさりと揺れる。

今日は バレンタインデー。やたらめったら 甘い匂いの漂う日だ。


「直接来た子は、みんな断ったんやけどなぁ…」


これは 下駄箱に 詰め込まれてた分、と 紙袋を軽く掲げて溜息を吐く忍足を

慰めていいのか 羨んでいいのか、には 判断が微妙なところだった。

が 貰うのは、クラスの女子 数名からの、「ギリだから」宣言つきの

チョコレートぐらいのものだからだ。


「それ全部食べるのに、どれくらい かかるだろうねぇ。」


結局 うまいフォローの台詞も浮かばなかったは、

取り敢えず 当たり障りの無い言葉を選んだ。


「さぁてなぁ…」


そんな会話をしているうちに、いつも別れる十字路に着く。


「じゃあ、荷物取ってから行くから。」

「おう。早よ来たってな。」


甘く笑う忍足に、少しばかり眩暈を覚えながら、は 家の方へと曲がった。


今日は、一人暮らしをしている忍足のマンションに泊まりに行くことになっている。

数ヶ月前から、バレンタインの夜は泊まりに来て、と 散々懐かれて 引っ付かれて、

15日は平日だから嫌だ、と突っぱねていたら、最終的には セックスの最中に

焦らされて 思考力を奪われた状態で了承させられてしまった。


何だかなぁ と思いつつ、けれどだって 忍足を好きで恋人なんてものを

やっているわけなので、自宅に帰り着くと、文句を言いながらも とっくに用意してあった

お泊りセットと、翌日の授業で使うテキストを詰め直したカバンを持って、

リビングから「お帰りー」と間延びして聞こえる母の声に、「ただいま。行ってきます。」

と適当に挨拶をすると、すぐに家を出た。








  ※   ※   ※








「いらっしゃい。」


が忍足の住むマンションの部屋に辿り着くと、出迎えた忍足は

シャワーを浴びたらしく、濡れた髪にタオルを被せ、

わしわしと 片手で拭きながら 「早かったな」と笑った。


「今夜は 奮発して すき焼きやで。」


と、忍足が宣言した通り、夕食は 蕩けるように柔らかい牛肉を使った すき焼きだった。


「奮発…って、何?特別イベントみたいな感じなの?」


からかい混じりに そう聞いてみれば、


「当たり前や!数少ない 甘々できるイベントやんか。」


至極真面目な口調で そう返されて、は 笑うしかなかった。


も、シャワー浴びといで。」


夕飯を済ませ、しばらく そのまま食休みをして 他愛も無い話をしていると

片付けは 俺がするから、と言って 忍足が を バスルームへ向かわせた。


はと言えば、まだ早い時間を指す時計を見上げながら、けれど もう

すっかり分かりきった風で、どうせ少しでも長くセックスがしたいんだろうと、

促されるままに バスルームへ向かった。








  ※   ※   ※









「うわ…」


シャワーを浴びてバスルームから出たを迎えたのは、

息も詰まる程の 甘ったるい匂いだった。


「ちょっ…侑士、何 この匂いっ」


忍足が用意した 彼と お揃いのパジャマを着て リビングへ向かうと、

匂いは さらに きつくなった。


くらりと 視界が歪みそうになるほど強烈な それは チョコレートのもので、

多分、もう家中が この匂いで満たされている。


「いや、ちょっとな。にも、手伝ってもらお、って。」


俺一人やと 食べ切れんし、と笑う忍足の手には、湯煎にかけたのだろう

とろとろに溶けたチョコレートの入ったボウルがあった。

それを ゴムベラで掻き混ぜながら 近寄ってきた忍足は、

人差し指に それを掬うと、の唇に ちょい、と載せた。


「ん…甘い。」


ぺろりとが それを舌で拭うと、忍足は 満足そうに笑った。


「ほな、準備しよか。」

「え?」


今から そのチョコレートで何か作るのか、と すぐにでもベッドに連れて行かれると

思っていたは 少しばかり複雑な気分で、ほっと小さく息を吐いた。


(何、俺 もしかして、かなり ヤる気満々だった…?)


うわぁ、と自分の思考に赤くなって わたわたするを尻目に、

忍足は ちゃくちゃくと 用意を進める。


「よっしゃ、準備万端や。」


忍足が リビングのローテーブルの上に用意したのは、

熱く湯気を立てる湯を入れたボウルに、先程のチョコレートの入ったボウルを

浮かべたものと、氷が カラカラと音を立てるアイスコーヒーのグラス、

液状のコーヒーミルクと、それを掻き混ぜるためのマドラー だった。


「侑士?これ、何すん…んぅっ!」


何すんの?と訊こうとして、の唇は 忍足の それに塞がれた。

舌を吸い出され、甘噛みされしまっては、もうに 抗う術はない。


キス一つで、くにゃりと力の抜けてしまったは、ゆっくりと床に座らせられる。

そうしておいて忍足は コーヒーにミルクを落として掻き混ぜる。


「甘いのばっかやと、長く出来へんからな。」


俺は ブラックで ええんやけど、そしたらが 嫌やろ?なんて、

ブラックでコーヒーが飲めないを気遣うような発言をするが、

これから 何をするか なんて 大抵の予想がついてしまったにしてみれば、

感謝する前に まず逃げ出してしまいたいところだ。


「なぁ…まさか、それ、チョコ…塗る気?」


その問いに 忍足は答えず、にーっこりと笑った。つまり それは肯定で、

は 甘ったるい匂いとの相乗効果で頭痛がするのを感じた。


「ええ子やから、大人しく しててな。」

「や、俺、良い子じゃないし…」


そう言ってが 腰を上げて後ずさると、


「ああ、逃げたら 縛るよ?」


なんて、重低音が耳に注ぎ込まれる。


「こ…の、キチクっ」

「うん。」

「あー、もう…やだ お前…」


脱力して は 床に ペタリと座り込んだ。

嬉々として服に手を伸ばしてくる忍足に、抗うこともしないままに。








  ※   ※   ※








べったりと延ばされたチョコレートごと胸の飾りを舐め上げられて、

は びくりと身を竦める。

チョコレートが なくなって 直に舐められると、腰の奥が痺れるが、

その度に 新たにチョコレートを塗り込められ、また 舐められる。


「ふ…ぁ…ゃっ」


吐息を漏らすの口には、これも チョコレートに浸した忍足の指が

咥えさせられていて、甘ったるい感触を強制されている。


「く…ふっ…ぅやぁ…」


両の小さな突起を、赤く膨れ上がるほどに舐められ 啜られて、

は そのまま達してしまう。


「んんっっ」

「何や…イってしまったん?我慢できんかった?」


くすくすと笑いながら、の腹に飛び散った白濁を 忍足のチョコレートまみれの

指が絡め取る。それを そのまま ぺろりと舐める忍足に、は 真っ赤になった。


「ん、甘いな。の えっちぃ味がする。」

「なっ…ばっ!やだ…ばかっ」

「まぁ そう言わんと。」


も舐めてみ?と その指を口に押し込まれる。


「んぐっ…んや…やらぁっ」


甘いチョコレートに混じって、苦い雄の味がする。

それが 自分の放ったものの味だなどと、考えたくなくて、

は ゆるく首を振り、その指から 逃れようとした。


「何や、嫌なん?は 我侭やなぁ。」


そう言って あっさりと の口から指を引き抜く忍足は、まるで 駄々っ子の

言うことを 仕方なく聞いているような 言い方をする。


「自分のなんか、舐めたいわけない…っ」

「うまいのに…」

「ふ…ざけんなっ」


涙ぐみながら けほけほと嘔吐くを見下ろして 忍足は笑う。


「しゃぁないなぁ…じゃ、口直し。」


カラン、と音を立ててマドラーを引き抜いたコーヒーのグラスを の唇に押し当てる。


「ん…冷た…っ」


口に含みきれなかったコーヒーが 肌を伝い、は ぞくりと 肌を粟立たせた。


「苦いの、紛れたやろ?」

「…うん。」

「ん。なら よかったわ。」


ちゅ、と唇にキスを落として、忍足は 愛撫の動きを再開する。


「ん…っっ」


先程 弄り回した乳首には触れず、その掌は の性器へと伸びた。

くにくにと 揉み込まれて、再度熱を取り戻したところに、

こちらもチョコレートを塗り込められる。


「ひぁ…っんっ!」


ぬめるチョコレートで 捏ねくられて、は びくびくと 腰を震わせる。


「ほい。コーティング完了。」


忍足の言葉に、自分の そこを見下ろして、は ぎくりと身を竦めた。


「な…に、これっっ!! 」


胸の時は、塗られては舐め取られていたから気付かなかったが、

チョコレートというものは、冷えると固まるのだ。

見下ろした そこは、すでにチョコレートの表面が固まっていて、

まるで、性器の形を模した それのように映った。


「や、やだっ…取っ…」


あわてて剥がそうと手を伸ばすが、その手は 忍足に払いのけられてしまう。


「だぁめ。これから じっくり 食べさしてもらうんやから。」


諭すように言った忍足が、自身の先端を撫ぜる。

外は固まっていても、内側は の体温で ゆるく溶けているため、

チョコレートは ぬるりと滑り、その小さな穴を刺激する。


「んーっっ」


は 唇を噛み締めて その感覚に耐えている。

忍足は そんなに構うことなく、その昂りを口に含んだ。


「んぁっ!」


くちくちと 音を立ててチョコレートが舐め取られていく。

先端部分を舐め取り終わって、忍足が口を離すと、くっぷりとの体液が

そこから溢れ、粒を作った。


…」

「や…侑士っ…も、や…」

「我慢できへんの?」

「ん…できな…っ」

「はー…しゃぁないなぁ…」


さっきイったばっかやろ、と言った忍足は 身を起こして、小休止とばかりに

コーヒーを口にする。甘ったるさを苦味で流し込んでグラスを置くと、

その脇に 放ってあったものを取り上げる。


「仕方ないから、栓しといたるわ。」

「へ…?」


さらりと言った忍足に、その意味を掴みきれず、は 目を瞬く、が、

一瞬後、走った激痛に、そんなことは もう考えていられなかった。


「あ…ああっっ、いたっ…いたいっっ!! 」


何をされているのか分からず、しかし確実に性器を犯している激痛に

は 首を振って 悶えながら、きつく閉じた眦から 涙を零す。


「ほら、ちゃぁんと、栓できたで。」


言われて、ゆるりと目を開けて見遣れば、ずくずくと 鈍い痛みのある そこには、

先程コーヒーを掻き混ぜていたマドラーが、深々と突き刺さっていた。


「なっ…!! 」


その あんまりな光景に、は 絶句する。


「これもな、慣れたら 気持ちよぉなるらしいで?」

「ひっ…あぁっっ」


なんて 笑って言った忍足が、くっ とマドラーを押すと、途端に走る痛みに

は 引き攣れた声をあげる。


「も…やだっ!抜け、ばかっっ」

「んー…あんまり ばかばか言わんといて?」


ちょーっと嫌やわ、なんて、忍足は 特に気にした風もなく笑って、

今度は 後孔に指を忍ばせる。


そろそろ湯煎の温くなってきた固まりかけのチョコレートを絡めて

孔の入り口に塗りつける。


「あ…っ」


そんな孔まで チョコレートを塗られて舐められているという卑猥な状況に、

は ぞくりとしたものが背筋を走るのを感じた。

内側まで忍足の舌に嘗め舐られて、マドラーで串刺しにされた性器が ひくりと震える。


内奥深くに潜り込んできた指に、絡みつく粘膜は、もうの意思には

従ってくれそうになかった。

忍足の指を 美味そうに食み、離すまいと締め付ける動きは、

の理性では止められない。


「ん…ふっ…ぅぁっ」


指を増やされ、前立腺を押し込むように擦られて、イきそうになる。

が、欲望の出口は、もう すっかり体温に馴染んだマドラーに ぴったりと塞がれ、

吐精を伴う絶頂は、望めそうになかった。


「なぁ 。」

「な…にっ?」

「俺のも、舐めて。」


の後孔から 指を引き抜いて、忍足は の身を起こさせる。


「んぁっ…や、動くと、いたい…っ」


マドラーが動いてしまい、痛いのだと訴えるを 四つん這いにさせ、

自らの性器にチョコレートを塗りこんで 忍足は、にーっこりと笑った。


「このチョコ。全部 舐め取ったら イかしたる。」


さ、がんばり、と促す忍足を 涙目で睨み上げて は それに舌を這わせた。


「ん…ん、ふ…ぁっ」


とにかく マドラーから解放されたくて、無心にチョコレートを舐め取る。


「可愛えよ、。」


が すべて 舐め取り終えると、忍足は ひょいと を持ち上げ、反転させて

後から抱き締める形で の中に潜り込んだ。


「ぅあ…っ あっ!や、そんな、いきなりっっ!」


深々と忍足を後孔に咥え込まされ、その膝の上に抱かれて、

は 声を上げるが、身体は すんなりと 忍足を受け入れた。

最奥を 忍足の剛直で捏ね回され、突き上げられる。


「んん…ぅあっ、ん、ん、やっ…ぁんっ」


がくがくと 揺れる身体に、力が入るはずもなく、は 抗いようも無く

快感に引きずり込まれてしまう。


「や…ね、侑…士、これ、取って…っ」


与えられる快感に耐え切れず、が、自らの性器を握り締めて 懇願する。


「ん?自分で抜いたらええやん。」

「やっ!できな…っ」


そんな 恐ろしいこと、と 息も絶え絶えに訴えるを、忍足は うっとりと見つめる。


「綺麗やで、…最高や。」


快感と苦痛、そして僅かな恐怖に震えるの、

その眉根を寄せた苦悶に近い表情が、忍足の性感を煽る。


「やだっ…やだ、侑士っ おねが…っも、やぁっ」


は、身悶えながら、きゅうきゅうと 忍足の熱を締め上げる。


「っ…!、ちょぉ ゆるめて?キツ…」

「あ、あんっ や、むりっ…むちゃ、言うなっっ」


くん、と大きさを増す忍足に喘がされながら、もう制御などできない と、

首を振るの 限界は近い。


「しゃぁないな、俺も そろそろ限界や。」


ふっ と 残念そうに息を吐いて、忍足は の性器を犯す棒に手をかけた。


「ん…あ、あっあっ…ひっ…ぅあぁっ」


ずるりと、棒が 尿道の内壁を擦る感覚に、は 狂乱した。

痛みと、強制的な排泄感に、恥も外聞もなく身悶え、声を上げる。


「ひぃぁっっ!あーっ」


くぷりと 音を立てて 棒が引き抜かれると、は 一気に自身を解放した。

大量の 白濁した体液が腹を濡らし、放出と同時に きつく締め上げてしまった

後孔には、熱い忍足の精が 注ぎ込まれる。


「あ、や…中に…っ」


体内を ぐっしょりと濡らされる感覚に、は 陶然とした表情を見せた。


「あふ…ぅ。…ぁ?」


激しい快楽から解放されて、安堵の息を吐いたは、次の瞬間、

下腹部を温かく濡らすものに、ぎくりと 身を強張らせた。


「なんや 、漏らしてしもたん?」


まだ、体内に自身の性器を埋めたままの忍足が、

ほぼ透明に近い液体を零して止められない の、その小さな穴を 優しく擦る。


「や…だっ、やだっ侑士、も、やだぁっ」


羞恥に泣き出すを あやすように抱き締めて 忍足は、


「ええよ、。みんな出してしまい?」


萎えたの性器を優しく擦る。徐々に放出は緩くなり、やがて止まる頃には、

は、疲れたように目を閉じ、そのまま眠りに落ちた。


「愛しとるよ、…」


囁いて 忍足は、を バスルームへ運び、その身体を磨き上げた。

途中で目を覚ましたは、自分の狂態を思い出して真っ赤になったが、

忍足が幸せそうに笑って宥めるものだから、もう考えることを やめた。

忍足が気にしないなら、もういいや、と諦めて。


甘いものを食べたから、と 歯磨きまで きっちりやらされ、バスルームを出ると、

は 忍足に抱き上げられ、ベッドへと運ばれた。

リビングの後片付けは気になったが、あんなことの跡を、正気の今 直視すれば

再起不能なくらいに羞恥に埋もれるだろうことを、忍足に諭され、

一人 ベッドへ潜り込んで 忍足が戻ってくるのを待つ。


「何や、寝とって良かったのに。疲れたやろ?」


無理さして ごめんな、と優しく笑って、忍足が隣に入ってくると、

は 忍足の胸に顔を埋めて抱きついた。


「ん。いいよ、もう。」

「ええの?」

「…恥ずかしかったけど……気持ち…よかったから…。」

「そ?」

「…うん。」

「ほんっま可愛えわ、。…愛してる。」

「俺も…大好き。侑士…。」


どちらからともなく口付けて、性感を煽ることの無いキスは、ゆるゆると長く続く。

二人の夜は、チョコレートよりも甘く、溶けていった。
















〜End〜





あとがき

尿道責めに失禁と、すっかりソフトSMちっく。
やりたかったこと やっちゃって かなりスッキリ(笑。
もう少し悪乗りしたかったけど、そこは自制。
順を追って もう少しだけ、過激なものも
曝していければいいかな、と思ってます。

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