告白 2
「なぁ、ゾロ」
「ん?」
「生きて帰って来いよ?」
「………」
沈黙。
「ゾロ?」
「約束はできねぇ…。」
「弱気なんだな。勝算ねぇの?」
「違ぇよ。ただ…守れるかわかんねぇ約束はしたくねぇんだ。」
「ゾロ…」
真剣な声で告げるそれは、誠実であろうとするが故か…
けどな、ひとつ忘れてんぜ?
「お前、生きて帰って来ねぇってことはよ…」
「や、帰って来ねぇとは言ってねぇ」
「例えばだっつの!いいから聞け。」
変な突っ込みしやがって、まったく!
「だからよ、帰って来れねぇってことは、約束破ることになんねぇ?」
「は?」
「や、だからよ、“親友との約束”ってやつ。」
「………」
沈黙。
「あ、もしかして、世界一になっても、迷子で帰って来れねぇってことか?」
あんまり黙ってるもんだから、さっきのが見当違いだったのかと思い至ったんだが…
それにしてもアホらしいこと真剣に聞いちまった…と思った瞬間、
「サンジ…」
地を這うような声で名前を呼ばれた。
やっぱり失言したか。
「てめぇ覚悟はできてんだろうな?」
うわぁ…マジ怒ってるかも…
「覚悟って何のだよ?」
って挑発してどうするよ俺!
このまま喧嘩別れになっちまうかな…そりゃちっと寂しいかもしんねぇ…
「俺のモンになる覚悟だ、クソコック!」
喧嘩腰に言われた予想外な言葉は、
「帰ってこれたら、俺はおめぇを離さねぇからな!」
俺の息を止めるには充分で、
「わかったら返事しやがれ!って、おい?!サンジ!?」
俺はその場に蹲っちまった。
「っっ……はっ、恥ずかしいこと言ってんじゃねぇよ!マリモのくせに!」
掠れた声で、それでも何とか絞り出した言葉に、
「帰って来いっつたのはお前だからな。」
あっさり言葉を返されて。
「俺は言うだけでいいと、思ってたんだからな。」
ぼそり、と言い継がれた言葉が切なくて、
「受け入れたのは、サンジ、お前だからな。」
その言葉が嬉しくて、
「だから、何だってんだよ…」
言った途端、また泣けた。
「なんで泣くんだよ…」
うるせぇっ。お前のせいだ!
「しょーがねぇだろ!涙腺壊れてんだ…ほっとけ!!」
「ったく…」
呆れながらも、腰を下ろして、肩を抱いてくれる。
「帰って来ねぇかもしれない俺に、縛り付けるわけにゃいかねぇとは思ってた…」
静かな口調が、ゆっくりと話し出す。
「けど、どうしても伝えたかった。ごめんな、サンジ…」
「なんで…謝るんだよ…」
「受け入れられるとは、正直思ってなかったんでな…」
苦笑交じりの、告白。
「言っちまったわけだが…。結果的に束縛することになっちまった…。」
「ゾロ…」
「おめぇを、離したくねぇんだ、サンジ。」
肩を抱く手に力がこもった。ちょっと痛ぇが、我慢してやる。
「もし…な、俺が帰って来なかったら、忘れてくれ…」
あ、ちょっとムッ!
「なんだよそれ。俺が帰って来いっつてんだ、帰って来い!」
「や、だからもし…」
「聞きたくねぇよ。最悪の仮定なんて。」
「サンジ…」
「一生覚えとくっつたろ?忘れねぇよ、何があっても。」
言った瞬間、ゾロは泣きそうな顔をした。すぐ立ち直っちまったけど。
「帰って来い、ゴーイングメリー号に。待っててやっからよ。」
笑顔で見送ってやるよ、行って来い、クソ剣士。
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