告白 3
翌朝、予定通り小島に着いたGM号から、船員が一人降りた。
どうやら、ルフィ達にはとっくに告知済みだったらしい。
チョッパーは泣いていたが、引き止めることはしなかった。
船長以下クルー全員の激励を受け、ゾロは船を降りていった…。
それからすぐだった。世界一の剣士が変わった、と噂が流れたのは。
三本の刀を携えた緑髪の剣士が、鷹の目を破った、と。
あれから3年。GM号は今日もGLを快調に進んでいる。
俺はと言えば、特に変わったこともなく、海賊王を目指すキャプテンのもと、オールブルーの情報を求める日々。
変わらぬ、毎日を送っていた…。
「帰ってこないわね〜」
船首甲板に出したパラソルの下でチェアに座っていたナミさんの、唐突な言葉は、甲板にいたクルー全員の視線を集めるには充分で。
「ど、どうしたんですか、ナミさん。」
俺はちょっと…いや、かなり吃驚した。
「んー、ゾロがさ〜。帰ってこないな、って。」
ちょっと思っただけよ、と笑うナミさんにメロリンしてる最中に、
「ゾロなー、やっぱ迷子になってんじゃねーか?ゾロだし。」
なんてことを、ウソップが真剣な顔でいうから、
「そっ、そーなのか?」
チョッパーがマジに受けちまって、
「あっはは!だったら間抜けよね〜。」
ナミさんが爆笑し始めた。
「ゾロは帰ってくるさ。俺との約束、まだ果してねぇもん。」
にしし、と笑いながらルフィが言う。
確か、海賊王になるまで付き合う、とかなんとかだったっけ。
「サンジとの約束だってあるしな。」
ゾロとルフィの約束とやらのことを考えていた俺に、船長が直々に爆弾を投下して下さりやがった。
何で知ってやがるんだコイツ!!
思わず、真っ赤になった俺だったが、
ナミさん!!何で驚かないんですかっ!!
知っていたらしい笑顔を向けられ、さらにガーンて感じだ…。
ゾロのアホ!!帰ってきたら覚えてやがれ!
「さて、と。2・3日中には次の島に着くはずよ。」
チェアから立ち上がったナミさんは、軽く伸びをして、
「結構大きめの島らしいから、足りないものとかチェックしといてね。」
チェアを片すと、部屋へ入っていった。
あぁ、そろそろ、晩飯の仕度をしなきゃな…。
買出しのリストも作んねぇと…確か小麦粉と胡椒のストックがねぇ。
酒…はまだあったか。ゾロがいなくてから酒の減りが遅いから、経済的で助かる。
「あっとは〜、何かあったかな〜」
独り言を言いつつキッチンへ向かう。後で倉庫も確認しておかねぇとな。
「い〜天気だな〜。探検日和だ!」
「普通の島よ、探検する所なんてないわよ。」
「いや、俺は探検してくるぞ!!」
「ちょっ!ルフィ!!」
島に着くなりルフィがすっ飛んで行った。
元気な奴だぜホント。
さて、俺もいきますかね。
「じゃ、ナミさん、行ってきますね〜。」
「無駄遣いしないでね〜。」
「了解しました〜。」
気合を入れて値切らねば…。
買い物を終わらせたのは昼過ぎ。ナミさん達は島で昼食をとるって言ってたから、食事の支度の心配はない。
この島の市場は活気があって、品揃えも良かった。
リストアップしたもんは一通り買えたし、珍しい香辛料なんかも手に入れることが出来た。
小麦粉肩にナンパなんかできねぇってのが少々痛ェけどな。
「うっし、帰るか。」
さっさと片付けて、レッツナンパだ!
あれ?船の前に誰かいる…?
GM号に着いた俺は、荷を片して再び船を降りようとした…んだが。
黒いマントを着た奴が、じっとGM号を見上げてやがった。
フードを目深にかぶってるから顔はわかんねぇんだが…
「気味悪ぃ…。」
けど放っとくわけにもなぁ…
「ちっ」
船を降りていくと、そいつは船から俺へと視線を移してきやがった。
そのままじっと俺を見てる。
「何か用かよ?言っとくけど、この船襲ってもいいことないぜ?」
努めて冷静に告げると、
「くっ、くくっ」
笑い始めやがった。
むっか〜!なんなんだコイツ!!
けど…その声に聞き覚えがあるように思えんのは気のせいか?
ずっと、聞きたかった、声のように思えんのは…
「…ゾロ?」
間違いだったらむちゃくちゃ恥ずかしい。
でも…多分…
フードを脱いだ男の顔は、やっぱりとっても見たかった男の顔で…
「ったく、変わってねぇなぁ…。ただいま、サンジ。って、泣くなよ…」
また泣いちまったよ…ホント情けねぇったら…
「おかえり、ゾロ。おかえりっ」
泣きながら抱きついて、キスして、はっと我に返った。
「ばっ!ここ往来じゃねぇか!!」
港を歩く方々が、変な目でみてるじゃねぇかっ!
なんてこと!最悪だ〜!
「後悔役立たずって言うだろ、気にすんな。」
「するっつーの!それと後悔は先にたたずだボケ!」
久しぶりに喧嘩をした。
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